バンテアイ・クデイ遺跡とは
About Banteay Kdei Remains
元々この地にあった「クデイ」と呼ばれるヒンドゥー教僧院に、12世紀末ジャヤヴァルマン7世が手を加え、仏教寺院として再建しました。
「バンテアイ」は砦、「クデイ」は僧房、「僧房の砦」という意味の名前を持ちます。
四重の周壁の内部にテラスや塔門、経蔵や中央祠堂が配置されており、バイヨン寺院の構成と共通点が多いです。特に塔門にある四面仏はバイヨン寺院やタ・プロームにあるものと同じ特徴を持っています。
東西約700m、南北約500mの広さの敷地内で増築を繰り返した結果、迷路のような構造になりました。元々あった「クデイ」は10世紀に建てられており、砂岩が主な建築材料として使われているために崩壊が進んでいます。
日本の調査チームが定期的に調査に訪れており、274体もの廃仏を発見しました。出土品は『プリア・ノロドム・シハヌーク・アンコール博物館』におさめられています。
破風(はふ)や柱に施された繊細なレリーフが美しく、優れた彫りの技術を持っていたことが分かります。蓮の花の上で陽気に踊るアプサラ(天女)のレリーフが立体的に柱を飾る「踊り子のテラス」は必見です!
バンテアイ・クデイの歴史と見所
944年から968年までアンコールの地を統治したラージェンドラヴァルマン2世王が築いた「クデイ」。ヒンドゥー教の僧院として建てられたようです。王の交代とともに、使用されなくなりました。
時は流れ、1177年アンコールの地はチャンパ軍によって占領されてしまいます。チャンパ軍を撃破しアンコールを解放した王がジャヤヴァルマン7世です。解放したもののアンコールの地はチャンパ軍の攻撃によって廃墟と化すほどに傷んでいました。
ジャヤヴァルマン7世が英雄と言われる理由は、強い戦いぶりと復興力です。
即位後アンコール・トムを首都と定め、そこで人々の暮らしを支えました。そして、精力的に歴代の王が建てた寺院を再建していったのです。
ジャヤヴァルマン7世が多くの建造物を造ったと伝わっていますが、修復のために手を入れ改造し、さらに繁栄させていった結果です。「クデイ」もチャンパ軍の攻撃により建物が壊されていましたが、「バンテアイ・クデイ」として生まれ変わりました。
見所はバイヨン寺院やタ・プロームでおなじみの四面仏です。
第一塔門で迫力ある出迎えをしてくれます。東塔門を抜けると蛇神ナーガがたくさん並ぶ「ナーガのテラス」が圧巻です。
参道の入口となっている東楼門の破風に注目しましょう。インドの叙事詩『ラーマーヤナ』のラーマ王子とシータ姫です。この2人の結婚式の様子がモチーフにされました。
特に女性に人気が高いポイントです。
ナーガやシンハ(ライオン)が欄干のモチーフになっている参道を通り過ぎ、「踊り子のテラス」へと進みましょう。柱に細かく描かれるのは一人一人異なる表情のアプサラ達です。蓮の花の上で躍動感あふれる踊りを披露しています。
中央祠堂の壁面のデヴァター(女神)像は立体的で女性的。曲線で美しい姿を表現しています。偽窓や偽扉はご神体を祀る場所の装飾で、中央祠堂が聖域だということを示しているのです。祠堂入口では強そうなドヴァラパーラ像が聖域を守ります。
バンテアイ・クデイ遺跡の歴史
西暦 | 王名 | 遺跡名 |
---|---|---|
944年 〜 968年 |
ラージェンドラヴァルマン2世 Indravarman III |
主な建築物:プレ・ループ、東メボン、クデイ、ピミアナカスなど |
1181年 〜 1218年 |
ジャヤヴァルマン7世 Jayavarman VII |
主な建築物:バイヨン寺院、タ・プローム、バンテアイ・クデイ、プリヤ・カーンなど |
バンテアイ・クデイ遺跡の見学ワンポイントアドバイス
幾度も増改築が繰り返されたので、遺跡の構造は複雑で迷路のようです。
ヒンドゥー教寺院から仏教寺院へ改築されたことから、中央祠堂付近も大掛かりな設計変更があったと見られています。
回廊は僧侶が生活できるように模様替えされており、リンガ(シヴァ神のシンボル)がヨニ(リンガの台)に設置されました。塔門内にある仏像は後世に持ち込まれたものであることが分かっています。
巨大樹と遺跡の退廃的なムード
複雑で迷路のような通路
通路は東から西まで一直線で、奥まで見渡せる構図は不思議な世界に迷い込んだような気分になるでしょう。撮影にも良いポイントです。
タ・プロームと同様に巨大樹(スポアン)の浸食を受けています。根が大きく張り出したもの、蛇のように石畳の上を這うもの、巨大樹と遺跡の退廃的なムードを味わうことができるでしょう。
日本の調査チームにより、274体もの廃仏が発見されています。
シェムリアップにある「プリア・ノロドム・シハヌーク・アンコール博物館」で公開されていますので、遺跡見物の後に見に行けばより関連性が理解できますね。
バンテアイ・クデイ遺跡の見学の注意点
修復中です!気おつけましょう。
遺跡全体はかなり崩壊が進み、木材で補修されている箇所や修復中の箇所がありますので気をつけて歩きましょう。間違っても補修している木材には手を触れないようにしてください。
バンテアイ・クデイの場所(Google MAP)
「アンコール・トム」の東南の角から東方向の軸上に位置します。
目の前は「スラ・スラン」。
同じく東の軸上に並びます。シェムリアップ・オールドマーケットから車で25分ほどです。