バクセイ・チャムクロンとは
About Baksei Chamkrong Remains
バクセイ・チャムクロンとはアンコール・トム南大門の南側、プノン・バケン山のふもとにある小さな遺跡です。ピラミッド型の寺院で、シヴァ神とその妻であるデバターが祀られています。ピラミッド寺院建築において、今までの建築様式とは違う変化が見られるのが大きな特徴です。
神が降臨すると言われているピラミッド上部に一基の祠堂を載せ、四方に階段を配置しました。10世紀のクメール建築物で主な材質はラテライト(紅土)と煉瓦で構成されています。
バクセイ・チャムクロンとは「鳥が舞う都」という意味です。アンコールの都に敵が攻めてきた時、大きな鳥があらわれ、その翼を広げて王を守ったという伝説が由来と言われています。
バクセイ・チャムクロンの歴史と見所
バクセイ・チャムクロンは10世紀に、アンコールに遷都したヤショーヴァルマン1世の息子であるハルシャヴァルマン1世により建設されました。シヴァ神とその妃であるデバターを祀り、父ヤショーヴァルマン1世に捧げた寺院です。
建設途中でハルシャヴァルマン1世の退位があったり、ヤショーダラプラからコ・ケーへの遷都があったりという紆余曲折を経て、再びヤショーダラプラに王都を戻したラージェンドラヴァルマン2世の手によって完成しました。
長年受け継がれてきたピラミッド型建築の変革期にあり、様々な試行錯誤の途中で建てられたと見られています。その模索の一つがピラミッドの上に載せられた高さ12mのリンガを模した祠堂です。
規模は小さいものの、3層のピラミッド型基壇の上に12メートルの祠堂が載ったスタイルの良い寺院となっています。煉瓦とラテライトで作られた外観が密林の緑と合わさり、とても美しく高潔な雰囲気を醸し出します。 地上から祠堂の頂部まで約27mあり、抜群の造形美が見所の一つとされています。古代の遺跡らしく外壁や階段には苔が生え、とてもドラマチック!階段の上り口両脇ではシンハ(ライオン)像が遺跡を守護します。 小さな寺院ながら、様々な仕掛けが施されていますのでご紹介しましょう。アンコール遺跡は殆どの遺跡が東面に入口があります。(アンコールワットは西面)バクセイ・チャムクロンも入口は東面ですが、東西南北4面全てに扉があります。
偽物の扉で塞がれている
柱に刻まれている碑文
ラテライトの色が美しい
何と、本物は東面の扉だけで、あとの3面は偽の扉というわけです。これらの偽の扉は植物文様で美しく飾られています。東面にあるリンテル(窓などの上部につけられる目隠し)にはアイラーヴァタ(聖獣である白い象)に乗るインドラ神(天候をあやつる雷神)の姿が見事に描かれます。また角にはガネーシャ(ゾウの頭を持ち、富をもたらす神)もあしらわれています。
歴代の王への賞賛と、ヤショーヴァルマン1世に捧げる旨が記されたクメール文字の碑文も一見の価値がありますね。
また、遺跡の各所で緻密な花輪模様装飾を見ることができます。柱に刻まれている碑文ではクメール民族の起源に触れていて、聖者と精霊が結ばれて誕生したのがクメール人だと刻まれているのです。祠堂に置かれている涅槃仏は後世になって置かれたもので、最初からあったものではありません。
バクセイ・チャムクロンの王と歴史
西暦 | 王名 | 遺跡名 |
---|---|---|
922年 〜 928年 |
イーシャナヴァルマン2世 Lagerg Lavalman II |
ヤショーヴァルマン1世の子。ハルシャヴァルマン1世とは兄弟にあたる。 |
928年 〜 942年 |
ジャヤヴァルマン4世 Yoshovalman I |
主な建築物:コ・ケー、プラサット・トムなど |
944年 〜 968年 |
ラージェンドラヴァルマン2世 Jayavarman II |
アンコールワット |
バクセイ・チャムクロンの見学ワンポイントアドバイス
バクセイ・チャムクロンはアンコール・トム入口の南大門からアンコール・トムに向かって左手に位置します。とにかくスタイルの良さが際立つ寺院で、写真を撮る際は小さなシンハ像も映るように撮ると良いでしょう。 観光客が少ないので、リンテルや遺跡全体に彫られている装飾をゆっくりと見て回ることができます。ピラミッドの最上層部の祠堂はリンガを模したもので、シヴァ神とのつながりを考えながら見学するとより興味深い体験になるはずです。
極めて繊細なリンテル
急勾配を超えた先には絶景が
四方に設置された階段はどれも急勾配ですが、西側の階段がやや上りやすくなっています。最寄りには「バイヨン」遺跡があり、車だと3分ほどで移動できます。 朝日を浴びた姿が最も美しいと言われているので、早起きして行きたい場所の一つです。
バクセイ・チャムクロン見学の注意点
急勾配です
全高27m、ピラミッド部分だけで13mもあります。階段はかなりの急な角度ですので、足元に気をつけて転ばないようにしましょう。滑りにくく履きなれた靴を履いて出かけるようにしてください。
飲食禁止
どこの遺跡でもそうですが、遺跡内は禁煙、飲食禁止となっています。くれぐれもマナー違反のないように。水はOKです。
バクセイ・チャムクロンの場所(Google MAP)
アンコール・トム南大門の近くにあり、プノン・バケン遺跡のふもとにあります。アンコール・トムに向かって左側に位置し、シェムリアップ中心部からは車で20分ほど。周囲にはたくさんのアンコール遺跡が点在します。