アンコールワット遺跡群に登場する神々
(ヒンドゥー教の神々)について
About Ta Proth Remains
遺跡見学の前に、遺跡に登場するヒンドゥー教の神々について学びましょう。ヒンドゥー教は主にインドで多数派を占める民族宗教であり今日では広義の意味でインド的宗教の総称となっています。ヒンドゥー教徒の数はインド国内で8億人以上、すべての国の信者を合わせると9億人とされ世界で3番目に信仰車が多い宗教です。その期限は先史文明のインダス文明まで遡るものであるとされています。カンボジアでのヒンドゥー教はクメール時代に上座仏教へと変遷され、独自の世界(カンボジア仏教)を作り出しました。カンボジア仏教ではヒンドゥー教の三神一体(ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァ)とそれぞれの神姫、そしてそれぞれの多様な化身を信仰しており、アンコールワットを代表とするクメール時代の遺跡では神々とクメール時代の王達の物語が緻密に描かれている。
アンコールワット遺跡群に登場する神々
アンコールワット遺跡群に登場する神々は、ヒンドゥー教からクメール時代を経て発展したカンボジア仏教の神々です。
ヒンドゥー教の三神(ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァ)とその化身(10大化身)は、様々な物語の登場人物として描かれており、代表的な神々と化身を覚えておくと遺跡見学がより充実したものとなるでしょう。
アンコールワット遺跡群に描かれている物語は主に世界創造を主とする神話です。
アンコールワット遺跡群では神や化身のレリーフや石像を多く見ることができますが、建設した時代やその時代の王の趣向がよく現れており、遺跡に登場する神々を観察することで当時の様子を描くことができます。
もっとも有名な物語は「乳海攪拌」です。ヒンドゥー教には天地創造をの過程が描かれた多くの神話がありますが、乳海攪拌も一つの派生とされています。
この物語は様々な遺跡の構成に現れており、アンコール遺跡群は、生活拠点の都市遺跡と神話を表現する宗教遺跡という2面性を持っています。
それでは、アンコール遺跡群に現れる主な神々を見ていきましょう。
シヴァ(破壊神)
ビシュヌ(維持神)
ブラフマー(創造神)
シヴァ
ヒンドゥー教の最も重要な3柱人の一人で「破壊」を司る神です。猛々しいデザインのレリーフを多く見ることができます。またシヴァのシンボルの「リンガ(男性器)の像」は非常に多く、アンコール遺跡群で見ることができる最もポピュラーな神と言えるでしょう。ビシュヌ
ヒンドゥー教の最も重要な3柱人の一人で「維持」を司る神です。アンコールワットはこのビシュヌを祀る寺院です。アンコールワットの壁には数十メートルに渡りヴィシュヌに纏わる「乳海攪拌」の物語が記されています。ブラフマー
ヒンドゥー教の最も重要な3柱人の一人で「維持」を司る神です。3柱神の中では信仰の人気が低く、レリーフも少ないです。しかし、穏やかな表情で描かれるレリーフは表情の描写が非常に緻密でその重要さを感じさせます。ガジャシンハ(象の鼻を持つ獅子)
ナーガ(蛇)
ガルーダ(聖鳥)
ガジャシンハ
像(ガジャ)の鼻を持つ獅子(シンハ)の霊獣でアンコールワット遺跡群で多く見ることができます。特に像のテラスを支える数十体に及ぶガジャシンハは圧巻です。カンボジアの国章にも描かれている特別な霊獣です。ナーガ
頭が複数ある蛇の霊獣で、ヒンドゥー教とその派生の仏教における最も有名な神といっても過言ではないでしょう。守護神として崇拝され、遺跡の入口や街の入り口、道路など多くのところで見ることができます。ガルーダ
ヒンドゥー教の原典であるインド神話から登場するし神鳥です。ヴィシュヌに仕え乳海攪拌などに登場します。アンコール遺跡群では人間の胴体と鷲の頭部をもつ霊獣として描かれ、その緻密な羽のレリーフは必見です。ガネーシャ(象)
ハヌマーン(猿)
シンハ(獅子)
ガネーシャ
ドルムィ(象)はクメール文化において神や王の乗り物とされているため多くの遺跡で見ることができます。ガネーシャのレリーフは極めて少ないですが、父であるシヴァとともに描かれています。ハヌマーン
ヒンドゥー教の猿の霊獣です。アンコールワット第一回廊の壁面「ラーマーヤナの戦い」の壁画で多く見ることができます。戦う猛々しい様子や喜々と喜ぶ様子など、表情豊かに描かれています。シンハ
獅子(ライオン)の霊獣で遺跡の守り神として、ナーガとともにどの遺跡にも必ずといっていいほど石像があります。カンボジアの国章にもガシャシンハとともに描かれており「王」を象徴するシンボルでもあります。ヤマ/カーラ(閻魔大王)
インドラ(雷神)
ラーマ
ヤマ(カーラ)
ヒンドゥー教の時間の神、死者の王です。日本の閻魔大王とも呼ばれています。ヒンドゥー今日ではユーモラスな存在として描かれており、ギョロリとした大きな目玉が特徴です。インドラ
ヒンドゥー教の雷霆神です。戦いの神ともされ、その姿はアンコールワット第一回廊の壁面「ラーマーヤナの戦い」で見ることができます。象に乗る姿が特徴的で、すぐに見分けられるでしょう。ラーマ
ヒンドゥー教における理想の君主像とされており「「ラーマーヤナの物語」の主人公です。この物語はヒンドゥー教でもっとも人気のある物語で、遺跡では壁画として、シェムリアップでは劇を見ることができます。デバター(女官や踊り子)
クリシュナ(笛を持つ化身)
アプサラス(水の精、天女)
デバター
神々に仕える女官や踊り子です。全ての遺跡で見ることができる石像で、各遺跡の時代や特徴が顕著に現れています。特に「東洋のモナリザ」と称されるバンテアイ・スレイのデバダーは人気があります。クリシュナー
笛を持った姿が特徴的なヒンドゥー教で最も人気のある神の一柱です。アンコールワット第一回廊の「マハーバーラタ」の物語やちょっとレアなクオル・コー遺跡でレリーフを見ることができます。アプサラス
インド神話の水の精で、天女とも呼ばれ美しい姿で描かれています。水中遺跡、バンテアイ・スレイのアプサラスは必見です。また、妖艶な踊り、アプサラダンスはヒンドゥー教文化圏では非常に有名です。サラスヴァティ(ブラフマの神妃)
ラクシュミ(ヴィシュヌの神妃)
パールヴァティー(シヴァの神妃)