ティエンムー寺
Thien Mu Pagoda
グエン王朝の前身である広南朝の時代に建てられたティエンムー寺。別名「天女の寺」とも呼ばれています。
フーン川沿いの小高い丘に建てられたティエンムー寺はフエの象徴。旧市街からなら遠くでも見渡せるほどです。
ベトナムのなかでも古く、由緒正しき仏寺のティエンムー寺は、美しい庭園と景観から地元民の憩いの場としても親しまれています。
ティエンムー寺の歴史と見どころ
ティエンムー寺は1601年に造営されました。この地に仏寺を建設したのはある伝説が関係しています。
グエン王朝の前身である広南朝の最初の皇帝グエン帝は、一人の老婆と出会いました。その老婆はティエンムー寺が建つ丘に登り人々にこのように語ったそうです。
「いつかこの地に本当の君主がやってきて、強力な国を作るために寺を建てる」
この予言を聞いたグエン帝は、その丘にティエンムー寺を造営しました。また、予言を伝えた老婆が天女だったのではと噂されたことから、ティエンムー寺は「天女の寺」とも呼ばれています。
完成当初は質素なティエンムー寺でしたが、その後次々と増築され今の姿になりました。大規模な建設が行われたのは1665年と1710年。
1710年、鐘の鋳造に巨額の資金を提供したのは、グエン・フック・チュー帝です。鐘の重さは3,285㎏もあり、フエでもっとも大きな鐘です。
この鐘の音は、10㎞離れた場所でも聞こえるといわれています。
ティエンムー寺の本堂
フーン川のすぐ目の前に位置する
1714年にはさらに拡張するための建設工事が開始されます。ティエンムー寺の玄関口である三重門や寝殿、経典を治める塔、瞑想の場所などを造営しました。
その翌年には帝廟にもある碑亭も作られ、ティエンムー寺の歴史が記されています。
そして1845年、フエのシンボルともされるトゥニャン塔(慈仁塔)がティエウチ帝によって建てられました。高さ21mの八角形の塔は七層で構成されており、仏教の悟りを意味する蓮がかたどられ、各層には異なる仏像が置かれています。
人々の信仰の場として崇められていたティエンムー寺ですが、ベトナム戦争中の1963年には悲しい出来事が起こりました。
当時、ベトナムは南北にわかれており、フエはアメリカの傀儡となった南ベトナム側に付いていました。そのため南ベトナムの政権を握っていたゴ・ディン・ジェムはキリスト教を推しており、仏教に対しては弾圧的な態度を取っていたのです。
これに抗議したのが、ティエンムー寺の寺僧だったティック・クアン・ドックです。フエからサイゴン(現在のホーチミン)まで車で向かったのはアメリカ大使館前。
信じがたいことですが、ここでティック・クアン・ドックは抗議の意を示すためガソリンをかぶり焼身自殺を図ります。炎に包まれてもなお姿勢を崩さなかったティック・クアン・ドックは、世界中に衝撃を与えました。
そして当時乗っていた車がオースティン車ですが、この車がティエンムー寺に展示されています。
ティエンムー寺は、ベトナム文学や詩にもたびたび登場してくる仏寺です。詩人としても知られている3代目皇帝ティエウチ帝も、ティエンムー寺の鐘の音を題材にした詩をたくさん詠んでいます。
ティエンムー寺を見学出来るツアーのご紹介
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ツアーの魅力と見所:
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午前はフエに7つある帝廟の中から、特に人気で見ごたえのあるトゥドゥック帝廟、カイディン帝廟の2帝廟を巡ります。
フエ名物の昼食を挟んで、午後からは旧市街にあるフエの王宮見学と、ティエンムー寺訪問、そしてボートクルーズをお楽しみください。
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ベトナム中部を案内するほとんどのガイドは、ダナンや他の街に移住しているため、フエに関しての知識が乏しいガイドが多いです。
しかしながら、このツアーを案内するチュンは生まれも育ちもフエという、根っからのフエっ子です。
他のどの日本語ガイドより、フエを詳しく案内できるチュンと、歴史的魅力が詰まったフエを観光できる特別なツアーです。
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また、他のツアーとは違い、昼食をフエの宮廷料理にアップグレードすることもできます。
ベトナム広しと言えど、伝統的な宮廷料理が残っているのはここフエだけ。フエでとれる食材を使った、王朝時代より伝わる宮廷料理をお召し上がりいただけます。
ティエンムー寺の見学ワンポイントアドバイス
ティエンムー寺の入り口には三重門という正門が建っています。
フエ王宮でよく見かける3つの門です。王宮や帝廟の門は真ん中が皇帝専用の入り口だったため締まっていますが、ティエンムー寺は3つとも開いています。
三重門をくぐると見えるのが、フエの象徴であるトゥニャン塔。左には六角大鐘楼が建ち、右には六角碑亭がトゥニャン塔を挟むように並んでいます。
トゥニャン塔はティエウチ帝が建てましたが、六角大鐘楼と六角碑亭は約130年前にグエン・フック帝が建てたものです。
奥に進むと本堂である大雄殿が建っています。三尊像が祀られており、この仏像はポルトガル人のジーン・デ・ラクロイスが鋳造したといわれています。
ジーン・デ・ラクロイスはグエン王朝の初代皇帝ザーロン帝を支援し、新しい国を作る手助けをしました。
クアン・ドック僧が乗った車
ティエンムー寺の門の一つ
ティエンムー寺を訪れたら、碑亭にも注目してみてください。ティエンムー寺の建築に関する歴史を記録や、3代目皇帝ティエウチ帝が唄った詩があります。
また大理石の亀も置かれていますが、ここには仏典の一説が記されています。
さらにティエンムー寺の寺僧だったティック・クアン・ドックがサイゴンまで乗った車も展示。
寺僧の体は焼失しましたが、心臓は形を保ったまま残ったといわれています。寺僧の心臓は不滅の精神をあらわしたものと伝えられています。
その心臓の写真も展示してあるので合わせて鑑賞してください。
ティエンムー寺の場所(Google MAP)
ティエンムー寺はフーン川沿い、フエ旧市街から少し西側に向かった場所に位置しています。
フエ王宮からは車で10分ほどと、併せて訪れやすいロケーションです。徒歩だと50分ほどかかりますが、涼しい雨季であれば、フーン川沿いを歩いて訪れるのもおすすめです。