グエン朝王宮Nguyen Dynasty and Citadel
ベトナム最後の王朝
140年に渡り歴代の王たちが暮らした場所
グエン朝王宮とは
グエン朝王宮は、ベトナム最後の王朝があった場所。古都フエの中で最大の観光スポットです。
1802年~1945年もの間、13代の皇帝が即位しました。
ベトナム初の世界遺産として登録されたグエン朝王宮(フエの歴史建築群)は、広大な敷地であることでも有名です。
周囲は約2.5㎞の城壁に囲まれており、広さは約3.6㎢といわれています。
ベトナム戦争の影響でほとんどが破壊されており、王宮の中央部分は広大な芝生のままです。修復作業は現在も続いており、入り口ではそのころの様子がわかるよう、3Dやジオラマで再現されています。
グエン朝王宮の歴史と見所
この地は、もともとチャンパ王国が支配していたエリアです。
チャンパ王国は192年~1832年まで続いた、とても長い歴史を思っています。
そのチャンパ王国は勢力を増しながら、だんだん中南部に移動。そのおかげで、フエに都を築くことができました。
初代皇帝はザーロン帝。そのころ話題となっていたフランス軍事建築者のスタイルを取り入れ、城壁を作り上げます。
王宮の造営が始まったのは1803年からです。
グエン朝王宮のおもしろいところは、着任した皇帝によって建築スタイルが違っていることです。
もともと中国の影響を大きく受けていたグエン朝は、中国スタイルが目立ちます。しかし、フランス統治時代に突入すると、西洋スタイルを取り入れた建築スタイルも建設されました。
ベトナム建築スタイルを取り入れているものもあり、異色文化あふれる建築物は、とても興味深いです。
グエン朝王宮のシンボルともいえるフラッグタワーは、王宮の向かい側に立っています。道に迷ったときなど、目印にもなるので覚えておくといいでしょう。
高さ約55mのフラッグタワー
敷地内に展示されている当時の写真
再建された回廊
大部分は依然修復工事中
戦争時代から残る弾痕
東部に建てられている顕仁門
グエン朝王宮全体図
グエン朝王宮は広大な敷地を誇っています。しかしそのころのまま現存している構造物はほんのわずか。
フエはベトナム戦争における激戦区の一つだったため、王宮の大部分は戦争の影響で壊されました。
① 午門
正門となる午門には3つの門が設けられています。
この午門は、中国にある紫禁城を模範に建てられたといわれています。完成した午門は、紫禁城よりも贅沢に作られました。
3つあるうちの真ん中の門は、皇帝のみが通るのを許され、現在も左右の門のみが開放されています。
牛門の2階は「五鳳凰楼」といわれており、そのころは皇帝が新年の挨拶や何か重大な発表をするときに行使されていました。
2020年現在は修復中のため、2階には上がれません。
② 太和殿
午門をくぐって最初に見えてくるのが太和殿です。
皇帝の即位式や公式行事が行われていた、グエン朝王宮の中でももっとも大切な箇所でした。
太和殿は、女性禁止の場所。たとえ皇后であっても許されませんでした。
ベトナム建築を取り入れた構造物は、前殿と正殿を回廊で結ぶ形式がとられています。
ベトナム戦争中に起きたテト攻勢で、太和殿は完全に壊されました。1970年に再建し、そのころの様子を知ることができます。
殿内は皇帝が実際に使った玉座が置かれていますが、写真撮影は禁止されています。
③ 右廡と左廡
太和殿の向かって左側が右廡、右側が左廡です。ここは、高級管氏の詰所として利用していた構造物になります。
役割も決まっており、右廡は武官が使用、左廡は文官が使用していました。
現在は右廡は、皇帝の衣装を着て記念撮影をするスポットになっており、観光客に人気です。
また左廡は展示スペース。グエン朝王朝について学べます。
④ 回廊
1804年に建設された紫禁城は、政治を執り行う事務職や生活区域として建てられました。
グエン朝王宮の中でも大きな構造物で、京都御所の半分ぐらいの面積を誇っていました。
そのころは勤政殿、乾成殿、坤泰宮とありましたが、フランスとの戦いにより、現在はその姿を見ることができません。
そのかわり、それらを繋いでいた回廊は現在も残っています。
外側の壁には立派な龍が描かれているのも見もの。
天井や扉、柱に至るまで中国スタイルをふんだんに取り入れた回廊は、目を奪われるほど美しいです。落ち着いた朱色で統一された回廊は、ゆっくり見て回るだけでも感動を覚えます。
⑤ 閲是堂
1826年に造営された閲是堂は、ベトナムで最古の劇場です。
2代目のミンマン帝の命令により建てられました。
ここでは宮廷雅楽を鑑賞したといわれています。
この宮廷雅楽は、ユネスコ文化遺産無形遺産に登録されており、現在も鑑賞できます。
楽器演奏から獅子舞、伝統衣装アオザイを着た女性の踊り、戯曲など豊富な内容なので、見ごたえ抜群。
ただし、観客に人数が一定数に達しないと開催されないので注意してください。
演奏が行われていない時間も、閲是堂の内部は無料で見学できます。
そのころ利用していた宮廷音楽の楽器や仮面がディスプレイしてあり、大変興味深いです。
⑥ 太平楼
12代目の皇帝カイディン帝によって建てられた太平楼。3代目の皇帝テイエウチー帝によって建設された書暇清楼を元に建てられました。
ここは歌学や読み物など書院として皇帝が楽しんでいた場所です。
色鮮やかな外壁は、ほかの構造物と雰囲気が違うのがわかります。
⑦ 四方無事楼
グエン朝王宮は東西南北に門が築かれています。その北側に鎮座する平和門の上に立つ構造物です。
ここは皇太子と皇太子妃が勉強する場として利用されていました。
建設を命じたのはカイディン帝。カイディン帝はフランス文化を積極的に取り入れた皇帝としても知られています。
内側にはシャンデリアなど、レトロなヨーロッパを感じる部分が随所に見られるのも人気のポイントです。
現在はカフェとして公開しており、グエン朝王宮を巡る穴場スポットになっています。
⑧ 世廟
グエン王朝の歴代皇帝の位牌を祀っているスポットです。1821年に造営されました。
ここに祀られている皇帝は10人。本来、グエン王朝の皇帝は13人ですが、5代目の皇帝ズクデゥク帝と6代目の皇帝ヒエプホア帝は廃位になったため祭壇がありません。
最後の皇帝バオダイ帝は退位したのち、フランスへ亡命したことから祭壇を設けられていません。
祭壇には肖像と皇帝、皇后の位牌が置かれており、祭壇脇にある日傘は、実際に皇帝が利用していたものといわれています。
⑨ 興廟
グエン王朝を築いた初代皇帝ザーロン帝の父親を祀っているところです。フランスとの戦いで焼失したものの、1951年に再建されました。
もともとは皇考廟と呼ばれていた興廟。のちのミンマン帝により1821年に移築され興廟と改名されました。
⑩ 延寿宮
皇太后の家屋として1804年に造営されました。
延寿宮の前方には前庭があり、その西側には静明楼という洋風の構造物があります。
これは1932年にドンカイン帝皇后の医院として建てられたもの。健康のために風通しの良いコロニアル建築スタイルを取り入れました。
延寿宮には贅沢な調度品がディスプレイしてあり、グエン朝の繁栄が伺えるスポットです。
⑪ 長寧宮
皇太后の宮殿として1821年に建設されました。
外壁のクリームイエローは、現在のベトナム建築にも使われているものです。
長寧宮は、カフェや土産物を販売しています。
また伝統衣装の展示スペースになっているので、実際に皇族が着用していた衣装を見学できます。
⑫ 瀛州
夜のライトアップが美しい苑地です。苑地には金水湖があり、周りには堂や楼などが建ち並んだ景勝地としてしられています。
太平楼を建設したテイエウチー帝も、作詩する題材として利用しました。
瀛州とは古代中国の影響を受けており、三神山(蓬莱、方丈)の一つで仙人が住むといわれています。
グエン朝の主要な王と歴史
西暦 | 王名 | 遺跡名 |
---|---|---|
1802~1819年 | ザーロン帝 嘉隆帝 |
フランス人宣教師ピニョーの助けを借り、グエン朝王宮を創建した初代皇帝。ベトナム(越南)の国名はザーロン帝の代に付けられた。 |
1820~1841年 | ミンマン帝 明命帝 |
2代目皇帝。政治以外に文芸にも力を注ぐ。近隣の諸外国と積極的な外交を行う。 |
1847~1883年 | トゥドゥック帝 嗣徳帝 |
4代目皇帝。フランスが開国を迫るなか、清も介入しグエン王朝は混乱状態になる。哲学と詩を愛した。 |
1916~1925年 | カイディン帝 啓定帝 |
12代目皇帝。フランス統治時代で、漢文からクオック・グー(現在のベトナム語)を使うよう改革。フランス文化を好んだ皇帝として知られる。 |
1926~1945年 | バオダイ帝 保大帝 |
13代目皇帝。日本軍介入のもと、フランスからの独立を果たしベトナム帝国を宣言。のちにベトナム八月革命がおこり、グエン王朝は幕を閉じる。 |
1802~1819年 |
ザーロン帝 / 嘉隆帝 フランス人宣教師ピニョーの助けを借り、グエン朝王宮を創建した初代皇帝。ベトナム(越南)の国名はザーロン帝の代に付けられた。 |
---|---|
1820~1841年 |
ミンマン帝 / 明命帝 2代目皇帝。政治以外に文芸にも力を注ぐ。近隣の諸外国と積極的な外交を行う。 |
1847~1883年 |
トゥドゥック帝 / 嗣徳帝 4代目皇帝。フランスが開国を迫るなか、清も介入しグエン王朝は混乱状態になる。哲学と詩を愛した。 |
1916~1925年 |
カイディン帝 / 啓定帝 12代目皇帝。フランス統治時代で、漢文からクオック・グー(現在のベトナム語)を使うよう改善。フランス文化を好んだ皇帝として知られる。 |
1926~1945年 |
バオダイ帝 / 保大帝 13代目皇帝。日本軍介入のもと、フランスからの独立を果たしベトナム帝国を宣言。のちにベトナム八月革命がおこり、グエン王朝は幕を閉じる |
グエン朝王宮の見学ワンポイントアドバイス
グエン朝王宮を見学するのに知っておくとより楽しくなるポイントをお伝えします。
・王宮の前にはフラッグタワーが高くそびえています。王宮を見学するときには、このフラッグタワーを目安にするといいです。万が一道に迷ったとしても、フラッグタワーを目指していけば大丈夫です。
・2年に一度、グエン朝王宮で1週間にわたるフェスティバルが開催されます。2020年は8月28日~9月2日にかけて開催。王朝時代の衣装を身にまとった衛兵の交替式や演奏など、華やかなイベントです。王宮は花で飾られ、色鮮やかに装飾されます。
・王宮内は場所によっては日を遮る場所が少なく、たくさん歩くので日差し対策、熱中症対策を十分に行いましょう。特に乾季にあたる3月~10月は要注意です。
フェスティバルの様子
敷地内には屋根のないエリアも多い
フエ王宮の場所(Google MAP)
フエ市内中心部、旧市街と呼ばれるエリアにあります。
ホテルがやレストラン立ち並ぶ新市街からフーン川を渡ってすぐの場所にあります。
世界遺産フエを見学出来るツアーのご紹介
《定番を押さえた決定版》フエ市内1日観光ツアー
ツアーの魅力と見所:
郊外にも観光スポットが点在しており、個人では効率よく周るのが難しい世界遺産フエ観光。当ツアーでは絶対外せない見どころを絞って効率よく観光します。
午前はフエに7つある帝廟の中から、特に人気で見ごたえのあるトゥドゥック帝廟、カイディン帝廟の2帝廟を巡ります。
フエ名物の昼食を挟んで、午後からは旧市街にあるフエの王宮見学と、ティエンムー寺訪問、そしてボートクルーズをお楽しみください。
《人気ガイド チュンさんと行く》フエ市内1日観光ツアー
ツアーの魅力と見所:
ベトナム中部を案内するほとんどのガイドは、ダナンや他の街に移住しているため、フエに関しての知識が乏しいガイドが多いです。
しかしながら、このツアーを案内するチュンは生まれも育ちもフエという、根っからのフエっ子です。
他のどの日本語ガイドより、フエを詳しく案内できるチュンと、歴史的魅力が詰まったフエを観光できる特別なツアーです。
貸切で周るフエ一日観光ツアー
【プライベート・貸切ツアー】ツアーの魅力と見所:
ゆっくり気ままに周ることができるプライベートツアーです。
見どころが多いフエだからこそ、自分のペースで周れる貸切ツアーがおすすめです。
グループツアーではカイディン帝廟とトゥドゥック帝廟の2か所しか周れない帝廟を、ミンマン帝廟を合わせた3か所周るのも貸切ツアーの特権。