トゥドゥック帝廟
Tu Duc Tomb
グエン王朝の4代目皇帝トゥドゥック帝の帝廟です。トゥドゥック帝は13代の皇帝のなかでもっとも在位が長く1847年~1883年まで続きました。
儒教を重んじた皇帝としても有名で、キリスト教廃絶に力を注ぎましたがフランスに占領されてしまい、その思いは叶いませんでした。しかし国に対する思いは人一倍大きかったようです。
グエン王朝のなかでもっとも繁栄した時代を築いたトゥドゥック帝ですが、子どもを授からず死去後は衰退の道をたどるようになります。
トゥドゥック帝廟の歴史と見どころ
トゥドゥック帝は4代目の皇帝として18歳のときに即位しました。グエン王朝の歴代皇帝のなかでもっとも長い在位を経験し、グエン王朝のもっとも繁栄した時期を築いた皇帝です。
トゥドゥック帝は儒教を重んじた皇帝としても有名です。前皇帝ミンマン帝の思いをそのまま受け継いだのです。そのため、1851年にはキリスト教宣教師の立入を禁止する条例と通知。それまでに建っていた教会が、この条例をもとにたくさん壊されました。
1856年にはナポレオン3世が、フランス人宣教師の保護を要求。さらにフランスとの国交を求め交渉を行いますが、断固としてトゥドゥック帝は拒否しました。このような背景から、トゥドゥック帝時代に建てられた建築物は、儒教の影響を受けたものが多いのが特徴です。
トゥドゥック帝には100人以上もの正室や側室がいましたが、残念ながら自らの子どもはいませんでした。そのため、のちに養子として甥のキエンプックを迎えます。トゥドゥック帝が亡くなった後の皇帝です。
トゥドゥック帝は亡くなるかなり前から、自らの墓建設の計画を立てます。墓の建設が開始されたのは1864年。複合体の墓のほとんどは3年かけて完成しました。
壮大なトゥドゥック帝廟の建築には多くの労働者が駆り出されたようです。ほかの皇帝には類を見ない壮大な帝廟には資金も必要。多くの課税を住民に要求しクーデターが起こったほどでした。
キリスト教廃絶に努めたトゥドゥック帝ですが、1858年にフランスとスペインの連合軍がダナンに侵攻し占領されてしまいます。その後コーチシナ戦争が起こり、各地で飢餓と反乱が勃発。
苦渋の決断で1862年に第1次サイゴン条約を結びました。条約により多くの土地と賠償金をフランスに受け渡すことになり、結果としてキリスト教布教と交易の自由化を認めざるを得なくなりました。
緑が多いのがトゥドゥック帝廟
いずれの門も意匠が凝らされている
それからはフランスの抑圧が強くなりましたが、1882年に中国の清が侵入しフランスと対立を始めます。儒教思想が強いトゥドゥック帝は藁をもすがる思いで、清に救援要請を依頼し、清仏戦争へ発展しました。
その翌年1883年にトゥドゥック帝は亡くなります。
トゥドゥック帝の墓は、ほかの皇帝とは異なり別荘地としても兼用されていました。敷地内には大きな池があり蓮が浮かんでいます。夏には見事な蓮の花が咲き誇り、絵画のような景色を鑑賞できます。ベトナムを象徴するかのような光景なので、ぜひ鑑賞してみてください。
ほかにも50近い建物が帝廟には存在しました。その建物にはすべて「謙」という文字を名前に入れています。これは1858年にフランスに占領されてしまったことを恥じて使われたともいわれています。
トゥドゥック帝の死後、改築が重ねられ現在もいくつかの建物が健在。なかでも「和謙殿」と呼ばれる寝殿は観光客にも人気のスポットです。
ここでは皇帝の衣装をまとって王座に座り写真撮影ができます。当時の皇帝の様子を思い浮かべながら体験してみてください。
帝廟のなかでもっとも大きな石碑も見ものです。重さ20トンもの巨大な石には、5000文字に渡って碑文が書かれています。本来碑文は次の皇帝が前皇帝の功績を称えて書くものですが、トゥドゥック帝は自らが書きました。
内容は、フランスと条約を結ぶまでに至った経緯や、自分に子どもができなかったことなどが書かれています。トゥドゥック帝の自伝とも取れる内容で、国を本当に愛していた皇帝でした。
トゥドゥック帝廟を見学出来るツアーのご紹介
《定番を押さえた決定版》フエ市内1日観光ツアー
ツアーの魅力と見所:
郊外にも観光スポットが点在しており、個人では効率よく周るのが難しい世界遺産フエ観光。当ツアーでは絶対外せない見どころを絞って効率よく観光します。
午前はフエに7つある帝廟の中から、特に人気で見ごたえのあるトゥドゥック帝廟、カイディン帝廟の2帝廟を巡ります。
フエ名物の昼食を挟んで、午後からは旧市街にあるフエの王宮見学と、ティエンムー寺訪問、そしてボートクルーズをお楽しみください。
《人気ガイド チュンさんと行く》フエ市内1日観光ツアー
ツアーの魅力と見所:
ベトナム中部を案内するほとんどのガイドは、ダナンや他の街に移住しているため、フエに関しての知識が乏しいガイドが多いです。
しかしながら、このツアーを案内するチュンは生まれも育ちもフエという、根っからのフエっ子です。
他のどの日本語ガイドより、フエを詳しく案内できるチュンと、歴史的魅力が詰まったフエを観光できる特別なツアーです。
トゥドゥック帝廟のおすすめスポット
トゥドゥック帝廟の敷地は広く、帝廟内外にお土産屋がいくつかあります。
帝廟前には立派な門が経っており3つの扉がありますが、真ん中の門は皇帝専用の扉として現在も閉鎖されたままです。
トゥドゥック帝廟は、映画「インドシナ」のロケ地になった場所としても有名な場所です。
① 冲謙榭
池のほとりにある建物です。ここでは現在、一日2回宮廷の伝統音楽の演奏が開催されています。入場は無料なので、当時に思いをはせながら演奏を聞いてみるのもおすすめです。
② 和謙殿
トゥドゥック存命中は、礼拝堂として使われていました。現在はトゥドゥック帝と皇后ルティエンアンの位牌が祀られています。
③ 鳴謙堂
トゥドゥック帝時代には劇場として使われていました。現在ベトナムで現存する劇場のなかでは2番目に古いです。 天井の絵画は見事なもの。星空や太陽が描かれており、天をイメージしたものです。グエン王朝時代は、天は皇帝のことをあらわしていました。
④ 石碑
トゥドゥック帝自らが書いた碑文です。トゥドゥック帝の心の内が読める内容で、さまざまな思いと葛藤があったことが伺えます。
トゥドゥック帝廟遺跡の見学ワンポイントアドバイス
トゥドゥック帝廟は、フエ市街からは5㎞ほど離れた場所にあります。
存命中は別荘地として使われていたとあって心和む景観です。トゥドゥック帝時代は感じが使われていたので、建物に書いてある「謙」の文字を探してみるのもおすすめ。
鳴謙堂の裏にある広場にある四神が描かれた壁画
冲謙榭からの風景
「愈謙榭」という場所が門をくぐるとあります。ここは映画のロケ地となった場所なので、事前学習として「インドシナ」を見てから行くといいでしょう。
皇帝の衣装を着られる体験も貴重です。フエ王宮の宮殿では写真撮影ができないぶん、こちらで衣装を着て王座とともに写真撮影をしてみてはいかがでしょう。
トゥドゥック帝廟遺跡の場所(Google MAP)
フエ中心部から車で15分ほど離れた場所に位置しています。
周辺の帝廟と併せて自転車やバイクをレンタルして訪れる人も多いです。
フエのフバイ空港から向かう場合は約30分ほどとなります。フエ駅は市内中心部にあるため、同様に15分ほどの移動で訪れることができます。