プレ・ループ遺跡とは
About Pre Rup Remains
コ・ケーに遷都していた首都をアンコール(ヤショダラプラ)に戻したラージェンドラヴァルマン2世が、遷都後に建てた霊廟です。アンコール・ワットができる150年ほど前の壮大なピラミッド式寺院で、火葬場の役割も果たしていました。
961年建立のアンコール王朝最後のれんが建築物と言われています。境内には石槽があり、灰を流したといわれている場所も見ることができます。「プレ」は変化、「ループ」は姿や体という意味で、肉体が浄化される場所という名前がつけられています。
先に建造された東メボン寺院の南方約1.5kmに位置し、同様の造りとされていますが、こちらの方が幻想的で厳かな雰囲気が漂います。
れんが造りの外壁には化粧漆喰により文様がつけられました。漆喰は剥がれやすいため劣化してしまいましたが、崩れたデヴァター像が醸し出すはかなげな印象が独特です。
5つの堂塔が立つ最上層からの眺めは格別で、ジャングルの彼方に沈む夕日の絶景ポイントとしてプノン・バケンに次ぐ人気スポットとなっています。
プレ・ループの歴史と見所
928年にコ・ケーに遷都したアンコール王朝ですが、ラージェンドラヴァルマン2世が再びヤショダラプラに首都を戻しました。その後、国家寺院として建造されたのがプレ・ループです。
3層の基壇の上部四方に4基の祠堂が配置されており、中央部分さらに高く盛られた基壇の上に中央祠堂があります。
東西南北に塔門を設けた二重の周壁があり、内側の周壁を入ったところに石槽があります。その近くでは火葬後に灰を流したといわれる場所を確認できるはずです。
経蔵や倉庫が上層部を囲むように整然と並んでいます。
中央祠堂を含む5基の祠堂全てに偽扉がつけられています。本当の開口部は東側のみ。
アンコール遺跡では殆どの建物が東向きに建てられており、東という方向に特別な意味を持たせていた事が理解できます。
偽扉には手の込んだ装飾が施されており、リンテル(まぐさ石)や付柱まで本物の入口と同じため、一見するとどこが入口なのか判断がつきません。
そして、一番の見どころは南西の祠堂壁面にあるレリーフです。
イノシシ顔のデヴァター(女神)像に注目してください。これはヴィシュヌ神の妻であるラクシュミーで、ヴィシュヌ神がイノシシに化身した姿を真似たものと言われています。
別面に描かれたのは4本の腕と4つの顏を持つブラフマー神の妻サラスヴァティ―です。ラクシュミーもサラスヴァティ―も4本の腕を持ち、同じ女神だったという説があります。
(ヴィシュヌ神と別離後にブラフマー神の妻となった)
これらのレリーフが中央祠堂を囲む4基の祠堂壁面に描かれた意味を考えると、奥が深いものです。
ちなみにブラフマー神には4つの顏がありますが、サラスヴァティ―の顏は一つ。
そのことからサラスヴァティ―がブラフマー神を真似た姿だということがうかがえます。
ヒンドゥの3大神であるヴィシュヌ神とブラフマー神を中央祠堂以外に描くのは失礼と考え、その妻の姿を残したのでしょう。
残るシヴァ神は先に造られた東メボンで最高位の神として崇められています。
祠堂の破風を装飾しているレリーフはインドラ神やカーラ(死者の王)が描かれ、特に南東祠堂破風のインドラ神モチーフは良い状態で残っています。
夕日の鑑賞スポット第二位がプレ・ループ中央祠堂からのサンセットですので、訪れた際はお天気が良いことを祈りましょう。
プレ・ループの歴史
西暦 | 王名 | 遺跡名 |
---|---|---|
アンコール朝 944年 〜 968年 |
ラージェンドラヴァルマン2世 Rajendravarman II |
主な建築物:東メボン、プレ・ループ、パクセイ・チャムクロン(寺院)など |
プレ・ループ遺跡の見学ワンポイントアドバイス
プレ・ループは火葬場として機能していたという特徴があります。
火葬が終わった後は、その灰で死者をかたどった線を描く儀式がおこなわれていました。内周壁を入ったところにある石槽はその名残です。
古の習慣を考えながら、中央祠堂へ進みましょう。
祠堂にある偽扉は何のために設けられたのでしょうか?
死者の通る扉なのでしょうか。そう考えれば東側だけが唯一の開口部というのが理解できますね。
(東は再生を意味し、生の象徴)太陽の上る方向を崇める自然崇拝によるものという考えもあります。
中央祠堂の周囲の壁面レリーフを眺めながらたどり着く最上部では感動的なサンセットを見ることができます。
上空から遺跡全体を眺めた後は、美しい夕日のシーンを撮影したいものです。
下からの眺めは圧倒されます
沢山の観光客が訪れます
夕日の鑑賞スポットではプノン・バケンが1位。次いで、プレ・ループが2位となっています。
主にヨーロッパからの旅行者から高い支持を得ているようです。
アンコール遺跡群の配置の謎に星座と関連するものがあります。龍座の配置と遺跡の配置が一致するという話です。
その説によるとプレ・ループはα星の位置にあることになります。大昔、紀元が始まるずっと前はα星が北極星でした。
その重要な位置にプレ・ループを割り当てたのは何のためでしょう? まだまだアンコール遺跡には謎が残るのです。
プレ・ループ遺跡の見学の注意点
サンセットを見る時の注意事項
プレ・ループは町から少し離れた場所にあるので、人が少ない道を通ることになります。安全のため、夕日を見終わったら速やかに他の皆と一緒に帰りましょう。日が沈んだらあっという間に暗くなります。雲が邪魔をしない美しい夕日が鑑賞できるベストシーズンは11月~5月の乾期です。当日は晴天を祈って、遺跡鑑賞を楽しみましょう。 単独行動は避け、タクシーやトゥクトゥクを利用する場合でも信用できるドライバーやガイドと同行してください。
プレ・ループの場所(Google MAP)
東メボンから南方向に1.5kmほど離れた場所にあります。
シェムリアップ・オールドマーケットからは車で25分ほど。
外側の周壁には東西南北に門がありますが、入口は東塔門となっています。