1989年に国名を改称されるまでは「ビルマ」と呼ばれていたミャンマー。非常に敬虔な仏教国であり、国民の約90%は仏教徒です。仏教徒といっても中国を経て日本に伝わった「大乗仏教」ではなく、東南アジアに伝わる「上座部仏教」を信仰しているため、ミャンマーの人々はより良い来世を迎えるために日ごろの行いを善くし、功徳を積むことにとても熱心。
ミャンマーの人々にとって仏教はごく身近な存在であり、日常的に寺院やパゴダ(仏塔)へお参りをして祈りを捧げます。そんな神秘の仏教国ミャンマーで登録されている世界遺産についてご紹介します。
ピュー族の古代都市群
2014年、ミャンマーで初めて世界遺産に登録されたピュー古代遺跡。エーヤワディー川流域には、かつて「ピュー」と呼ばれる民族の都市が点在していました。古代ピュー民族は独自の文字や文化をもち、東南アジアの広範囲に渡りピュー・コインと呼ばれる銀貨が出土していることから東南アジア屈指の都市国家だったとされています。
ピュー王国は紀元前2世紀から紀元9世紀ごろまで、約1100年もの間栄えたと伝えられていますが、未だ多くは謎に包まれたままなのです。遺跡群は全部で7つ発券されていますが、そのうち「シュリケストラ」「ベイターノ」「ハリン」の3つが世界遺産に登録されています。公共交通機関を利用して個人で3ヶ所の世界遺産すべてを一度に回るのは難しいため、行きたい場所を絞るか、全て回る場合はツアーを利用したほうがいいでしょう。
・シュリケストラ
ヤンゴンからバスや車で約5時間かかり、ピィという街の郊外にあります。鉄道の場合は8時間半と車よりもさらに長時間となるためあまりおすすめしませんが、3つの遺跡の中では一番アクセスしやすい場所です。シュリケストラはかつてピュー族の王朝タイエーキッタヤーの首都があった場所であり、今でもミャンマーの河川水運の大事な拠点として栄えています。
また3つある遺跡群の中ではこの遺跡が最も古く、また考古学研究所が拠点を構えていることから修復や展示もしっかりと行われています。歴史保護地区となっている一帯には城壁やお寺が残されており、一番の見どころは「ボーボージーパゴダ」。全長46mにもおよぶ巨大な釣り鐘のような独特の形をした立派なお寺です。
4世紀から9世紀にかけて作られ、この地域で最も古い仏塔の1つでもあります。「シュエミェッマンパゴダ」では観光名所にするために、地元の人たちのアイデアで大仏にメガネを掛けさせたというユニークな大仏も。遺跡の中心には博物館があり、遺跡からの出土品が展示されています。
ピィは街そのものも立派な観光地であり、ミャンマー三大寺院のひとつと言われるシュエサンドー寺院があるのもこの街です。ピュー王国の遺跡を見てみたいけれど時間がない場合や、観光したいという方にはシュリケストラが最適でしょう。遺跡内を牛舎で周るのもオススメです。
・ベイターノ
シュリケストラから車で約3時間北上した街。ベイターノの近くにはネピードー空港がありますが、3つの遺跡の中では最もアクセスが不便です。森の中に遺跡群あり、シュリケストラに比べ修復・復元作業があまり進んでいないため自然のまま朽ちた遺跡を見ることが出来ます。
ベイターノはシュリケストラ以前に栄え、紀元前2世紀から紀元後7世紀頃までピュー王国の中心だったと言われているため王宮跡や王族の住む家の跡などを見ることができ、博物館も建設されています。敷地内には牛や羊が放牧されており、のどかな風景が広がっています。
・ハリン
およそ2世紀頃に作られた古代ピュー王国の要塞都市。ハリンはヤンゴンからかなり離れており、ヤンゴンからはマンダレー空港を経由して車で2時間程。最寄りの町ウェットレットまでは、マンダレーから鉄道でも行くことができます。
ハリンは歴史保護地区にある遺跡の中に村が存在していて、古くからのお寺が残っているのはもちろんのこと、歴史ある温泉も入浴施設として利用されており、生活の中に遺跡が残された街です。3つの遺跡の中で最も情報が少ない場所ではありますが、お墓なども見ることができます。
バガン遺跡
2019年7月、ミャンマーで2つ目の世界遺産となったバガン遺跡。なんと1995年に登録を目指してから、実に24年もの歳月を経ての登録となりました。年間を通して雨量が少なく朝日と夕日の名所となっていることから、今後観光客の増加が確実視されています。
そんな今注目のバガン遺跡ですが、バックパッカーなどの海外観光客が朝日や夕日を見るためにパゴダ(仏塔)によじ登る行為が問題になっており、ミャンマー文化省考古学局はバガン遺跡(考古学保護地域)にあるすべての仏教建築物への登楼を禁止しています。
神聖なパゴダ(仏塔)に登ることは、やっとの思いで世界遺産に登録された遺跡を破壊しかねず、また地元住民への敬意に欠けた行為であることを理解して見学しましょう。またバガン遺跡の修復には、世界遺産登録の候補に挙げられた1995年から日本も協力しています。
世界三大仏教遺跡のひとつバガン遺跡
カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドゥールとともに世界三大仏教遺跡と呼ばれるバガン遺跡。バガンには3000ものパゴダ(仏塔)や寺院があると言われていますが、いくつかの有名パゴダを除けば、まだ訪れる人もまばらで、静けさの中でじっくりと遺跡と向き合うことができます。
パゴダは一人の寄進者でも同じ形のものをつくらないという慣習があり、またつくられた時代によって様式が変わるため、ひとつひとつに異なる趣があります。人気のあるパゴダをひと通り見て回ったら、あとは細い道を奥へ奥へと進んで、ぜひお気に入りのMyパゴダを見つけてみてください。規模は小さいながらも、フ朽ち果て方やフォルムが美しく、心に響くパゴダがきっと見つかるはずです。
「オールドバガン」と「ニューバガン」
バガンは16平方マイル(約40平方キロメートル)もの広いエリアを指しており、エリア内にバゴダ(仏塔)や寺院の遺跡が点在しています。特に城壁に囲まれた「オールドバガン」は考古学保護区に指定され、バガンでも最も高い寺院「タッピニュー寺院」や二番目に高い「ゴードーパリィン寺院」、王宮を模して造られたという「博物館」、そして、バガン一美しい「アーナンダ寺院」など重要な遺跡がオールドバガンに遺されています。
またオールドバガン一帯を保護地区に指定したことで、5軒のホテルや少数のレストランを除いて、ほとんどパゴダ以外の建造物が存在しません。周辺地域についても12m以上の建築は禁止されるなど、バガンの景観は今後も守られることが保証されています。
まとめ
以上、ミャンマーにある2つの世界遺産についてまとめてみました。どちらの遺跡も世界有数の神聖な場所です。ぜひその空気を感じながら、ミャンマーを楽しんでください。