国技と聞いて皆さまはどんな競技を思い浮かべますか?例えば、日本においては大相撲の取り組みを思い浮かべる方が多いと思います。
タイでは、どのような競技が国技とされているのでしょうか?それは、「ムエタイ」です。今回はタイの国技とされているムエタイについての歴史と現在についてご紹介します。
目次
ムエタイの発祥について
ムエタイとは、「タイの格闘技」(muay=格闘技/thai=タイ)というその名の通り、タイの国技にもなっています。さて、タイのムエタイというのは、簡単に言ってしまえば、タイ式のボクシングです。ムエタイの原型となる体術は、もともと中国の南方の拳法に由来すると言われています。現代のムエタイの原型となる体術は、拳にグローブをつけず、木綿や麻のヒモ、乗馬用の革ヒモを巻き、時によっては粉ガラスや砂をニカワで固めてヤスリ状にして戦うという大変危険なスタイルのものでした。
ムエタイの世界の二人のヒーローへの憧れ
史書に初めてムエタイに関する記述が登場するのは、タイの隣国であるミャンマーとの白兵戦についての記述だと言われています。とくに著名なのは、アユタヤ王朝時代にミャンマー軍に捕らわれたシャムのナレスワン王が、ミャンマーが誇る兵士に対し、ムエタイの体術を使って武功を上げて解放されたという逸話です。当時のタイの軍隊においては、軍の必須課題としてムエタイの体得が課されていました。
また、1767年に、アユタヤ朝がミャンマーによって陥落した際、敵の捕虜となった兵士の一人ナイ・カノム・トムという人物が、九人のミャンマーの武術家を次々に倒したとされています。シャムのナレスワン王とナイ・カノム・トムの二人は現在でも伝説のヒーローとして、タイの少年たちがムエタイごっこをする際の憧れの役柄となっています。
現代におけるムエタイについて
現代において、ムエタイはどのような評価を受けているのでしょうか?
ムエタイの広がり
ダイエット方法の一つとしてフィットネス界隈で不動の人気を誇るムエタイは、数は限られていますが日本においても教室が全国各地で開かれています。また、アマチュアムエタイ世界大会には50か国が参加し、世界的に競技人口がいます。
現代のムエタイのルール
現地に着いてすぐにでもムエタイを観戦できるようにルールの簡単なまとめをご紹介します。
・ボクシンググローブをつけて、ボクシングと同様の正方形のリングで闘う。 ・ボクシングに似ていて、ウェイト制で全19階級にわかれている。 ・1ラウンド3分のラウンド形式で合計5ラウンドの形式で行われるのが通常。 ・インターバルは、ボクシングと違い2分。 ・有効な攻撃はパンチ、キック(蹴り)、肘打ち、膝蹴りのみ。使用可能な体の部位は「両拳、両脚、両膝、両肘」の計8か所。 |
ムエタイの勝敗は4種類(判定、TKO、KO、反則)の4種類
〇「判定」による勝ち。 ムエタイでは審判が3人いて、1ラウンド毎にラウンドを評価します。5ラウンドが終わった時点で持ち点が多い選手が「判定勝ち」となります。この採点方式の基本はボクシングと同じです。 |
〇「TKO」による勝ち。 有効な体の部位である「両拳、両脚、両膝、両肘」の計8か所を使用した攻撃を受けたことによって激しくKnock Downした場合に適用されます。審判がその試合を続行することが困難と判断して、10カウント数える前に試合をストップした場合に「TKO」となります。また、有効な部位による攻撃で目じりの裂傷、鼻を骨折した場合も「TKO」として扱われます。 |
〇「KO」による勝ち。 |
〇「反則」による勝ち。 |
ムエタイとキックボクシングの意外な関係
ムエタイは、キックボクシングの源流であるとも言われています。しかし、キックボクシングは、ムエタイの競技とは似て非なるものです。大きな違いとしては、ムエタイはキック中心の戦いですが、キックボクシングは選手によって、パンチ主体やキック主体など技の幅が広いということになります。
ムエタイの秘めたる魅力とは
ムエタイの魅力は、選手が試合直前に行う宗教的な踊りが人目を惹きます。この踊りをワイクー(ワイクルーとも言う)というのですが、ワイクーは神や師に捧げられるものですが、こうした儀式や危険な技など非スポーツ的な要素を残すムエタイが現在のタイで根強い人気を誇るのは、伝統の格闘技というだけでなく、豊富な人材を貧困な地方に求め得るという経済的背景、ギャンブルの対象であるという社会的背景に負うところが大きいと言われています。
ムエタイの観戦って、できるの?いざ、ムエタイを観戦!!
バンコクを訪れるのならば、ムエタイの観戦をされることをお勧めします。肘打ち、キック、芸術的なフェイントなどを特徴とするムエタイは一見の価値ありです。
ムエタイの観戦に必要な情報はどうやって集める?
バンコクでは、元々王室の管理下にあり現在は民間会社が運営しているラチャダムヌーン・スタジアムと、タイ陸軍が運営するルンピニー・スタジアムがムエタイの2大殿堂として双璧をなしており、毎日どちらかのスタジアムで試合が組まれています。
一日に何試合か組まれますが、初めのほうの試合は、まだ子供のあどけなさを残した選手による前座のような試合から始まります。映画のように一番初めから見ていないとストーリーがわからないというものではありませんので、途中から観戦しても楽しめます。それでは、有名どころの「ラーチャダムヌン・スタジアム」と「ルンピニー・スタジアム」についてご紹介します。
ラーチャダムヌン・スタジアムにて観戦
ローカル色の濃いラーチャダムヌン・スタジアムは、近くに昔からの市場があるなど、古い町並みの中に佇む歴史のあるスタジアムです。場内はエアコンが効いているので年中快適です。開催日は月・水・日曜日の週三日です。日曜日は17時~20時と20時半~23時半の2回開催です。
ルンピニー・スタジアム
ルンピニー・スタジアムでのムエタイ観戦は火・金・土曜日にできます。つまり、休日は月・水・木・日曜日で週の半分は営業していません。火曜日・金曜日は18時30分から試合開始で、土曜日は夕方の部と夜の部の二部制です。夕方の部は午後4時30分~、夜の部は午後8時30分から試合開始です。
ムエタイの観戦は、いくらくらいかかる?
観戦料は席のグレードによって異なります。
・スタンド席の場合、500バーツ(約1700円)
・大相撲でいう「砂かぶり」の席に相当するリングサイド席は2000バーツ(約7000円)
また、より小規模のスタジアムも存在し、プーケットやチェンマイなど主要都市でも興行が行われています。どれくらいの規模の興行に参加するか、スタンド席かリングサイド席かによって値段が変わってきます。観戦費用は、昼食代なども込みとして日本円換算で一万円分ほどのバーツを用意しておけば大丈夫です。
まとめ
いかがでしたか?タイに観光に行ったら、タイの国技ムエタイは、ぜひとも見てくることをお勧めします。大相撲を見て日本の文化を知るように、ムエタイを観戦することでタイの文化の一側面が見えてくるかもしれません。タイの新しい一側面を皆様が発見できますように。