みなさんはベトナムにある世界遺産をご存知でしょうか。フエ・ホイアン・ミーソン聖域・タンロン遺跡・胡朝の城塞・ハロン湾・フォンニャ＝ケバン国立公園・チャンアン…全部で8か所ありますよね。ベトナム旅行を予定している方はある程度知っていると思いますが、世界遺産の“候補”となった名所はいくつあるかご存知でしょうか？
今回は、ローカルに人気の隠れた名所である世界遺産候補を、「ネクスト世界遺産」と題して皆さんに紹介していきます。お決まりの観光スポットよりも、誰も知らない場所へ行ってみたい！そんな一風変わった旅行をお好みの方は、ぜひ本稿を参考にしてください。それではスタートです！
ベトナムのネクスト世界遺産①フォンソンの歴史遺跡と景勝地
引用：Vietnam National Administration of Tourism
ハノイ市郊外のミードゥック郡にあるフォンソン村は、仏教の聖地・フォン寺（香寺、パフューム・パゴダともいう）を始めとする「フォンソンの歴史遺跡と景勝地（Các chùa ở Hương Sơn）」がある事で知られています。フォン寺への巡礼ルートは独特で、昔ながらの手漕ぎボートで川を渡り、フォン山の山道をロープウェイや徒歩で進んでいくもの。
引用：Apro Travel
山中には直径50メートルの入り口があるフォンティック洞窟があり、中の本堂からは線香の香りが漂い、天井から差し込む光が神秘的な空気を漂わせています。洞窟の奇岩から滴り落ちる水滴にはご利益があると言われており、毎年大勢の参拝客が訪れます。
周辺には10数か所に及ぶ寺院や祠、鍾乳洞などがあり、これら一帯は黎朝時代（1442～1497年）に作られたと言われています。その歴史的価値やフォンソンの景観も含め、2017年に国の特別史跡として認定されました。ハノイからは日帰りツアーも出ているので、ぜひ利用してみてください。
ベトナムのネクスト世界遺産②クックフォン国立公園
引用：TRANG THÔNG TIN ĐIỆN TỬ CHÍNH THỨC CỦA SỞ DU LỊCH TỈNH NINH BÌNH
ベトナム北部ニンビン省にある「クックフォン国立公園（Vườn quốc gia Cúc Phương）」は、1962年に設立されたベトナム初の国立公園です。2万2,200ヘクタールにのぼる敷地内には、2,000種以上の動植物や、遺跡が発掘された古代洞窟、樹齢1,000年を超える大木があり、エコツアーを通じて学ぶ事ができます。
引用：同上
色鮮やかな蝶が飛び回るシーズンになると、この世のものとは思えない幻想的な光景に出会えます。山岳地帯に住む少数民族「ムオン族」との交流も可能で、ムオン村で伝統的な踊りを見学したり、彼らの所有する高床式住居に宿泊するなど、貴重な文化体験ができるツアーもあります。
現在は世界遺産登録を目指してユネスコに申請中です。ニンビン省といえばチャンアンや古都ホアルー、タムコックなどの名所が有名ですが、余裕があればぜひクックフォン国立公園も訪ねてみてください。
ベトナムのネクスト世界遺産③カッティエン国立公園
引用：Cục Thống kê Thành phố Hồ Chí Minh
ベトナム南部のドンナイ省・ラムドン省・ビンフオック省にまたがる「カッティエン国立公園（Vườn quốc gia Cát Tiên）」は、低地熱帯林が広がる自然公園です。7万1,920ヘクタールにのぼる広大な土地はベトナム随一で、2001年にユネスコ生物圏保護区として認定されました。
園内には数えきれない動植物が生息し、急流や滝などの水辺にも恵まれています。特に、300体の淡水ワニが住むバウサウ湖は、ラムサール条約（湿地保存を促進する国際条約）に認定された事もあり、国内有数の保護区域として知られています。その上を手漕ぎボートで進む貴重な体験ができる他、エリア内はトレッキングやサイクリングなど様々な手段で楽しめますし、夜はナイトサファリツアーも開催されます。
カッティエン国立公園へはホーチミンから車で約4時間。早朝に出発すれば日帰りも可能ですが、ぜひ1泊2日の日本語ガイド付きツアーに参加してみてください。
ベトナムのネクスト世界遺産④サパの古代岩（Bãi đá cổ Sa Pa）
引用：Cổng thông tin tỉnh Lào Cai
ベトナム北西部ラオカイ省にある、少数民族の町サパ。市街地から離れたムオンホア渓谷には、昔ながらの美しい棚田が広がっており、その合間に約200個の「古代岩（Bãi đá cổ Sa Pa）」が点在しているエリアがあります。
1925年にフランスの考古学者が発見したもので、大小様々な岩の表面には、人物・自然・文字・模様と思わしき彫刻が施されています。研究者の間では、モン族が残した古代地図ではないかと言われており、かつての人々の暮らしぶりが伺えます。
残念ながらユネスコ世界遺産としては認められなかったものの、ベトナム政府からは重要な遺跡であると認識されています。サパの観光スポットとしてもあまり有名ではありませんが、古代岩に込められた神秘的なメッセージを見に来るのも面白いと思います。
ベトナムのネクスト世界遺産⑤カットバ諸島
北部最大の港町ハイフォン市から30キロメートル沖合にある「カットバ諸島（Quần đảo Cát Bà）」は、約30平方キロメートルの海域に367の島々が浮かぶ群島です。石灰岩から成る島には手つかずの原生林が残り、サンゴが生息するランハ湾は「青い真珠」などと比喩される一方で、ベトナム戦争の史跡が生々しく刻まれており、歴史を学べる島でもあります。
引用：ECO GROUP
カットバ諸島はユネスコ生物圏保護区に認定されており、世界遺産のハロン湾と共に巡るクルーズツアーが人気の模様。さらに、カヤックに乗って鍾乳洞を探索したり、島に降りてトレッキングをしたり、サイクリングやシュノーケリングまで体験可能です。リゾート地としても有名なので、ビーチでのんびり過ごす人も多く、毎年ハノイから大勢の観光客が訪れます。
ベトナムのネクスト世界遺産⑥イエントゥ遺跡と景観
2015年に世界遺産登録を目指す構想が明らかにされた「イエントゥ遺跡と景観（Quần thể di tích và danh thắng Yên Tử）」。その中でも、陳朝時代（1225～1400年）の遺跡とされるイエントゥ山のドン寺は特に有名です。ハノイ北東部クアンニン省にあるイエントゥ山は、険しい岩場が続く標高1,068メートルの低山で、山頂にはチュクラム宗の開祖を祀るドン寺がそびえ立っています。
見た目は小規模なお寺ですが、建材に銅を使用しており、重さはなんと60トンあります。山頂に建つ銅寺の中ではベトナム最大規模と言われています。イエントゥ山はこの他にも数々の寺院や仏塔を残しており、貴重な生態系を有する事も相まって、世界遺産レベルの価値があると評価されてきました。
旧正月には大勢の参拝者がロープウェイを乗り継いで訪問し、古代の人々に思いを馳せます。ハノイからは1日がかりの旅となりますが、興味があれば訪ねてみてください。
ベトナムのネクスト世界遺産⑦バビ湖
引用：Huyện Ba Bể
ベトナム東北部バクカン省のバーベー国立公園にある「バーベー湖（Hồ Ba Bể）」は、標高200メートル程の山岳地帯にある巨大な淡水湖。面積は約500ヘクタールにのぼり、石灰岩の山々や原生林、野生動物、鍾乳洞、小さな滝、妖精が住むとされる池など、見事な大自然に出会える場所です。近隣には、少数民族タイー族を起源するナムマウ村とパックゴイ村があり、伝統的な生活様式の体験も可能です。
引用：Ủy ban về người Việt Nam ở nước ngoài
ちなみに、バーベー湖には恐ろしい伝説があります。はるか昔、竜の神様がみすぼらしい老婆に化けてナムマウ村を訪れた際、ほとんどの住民が彼女を冷たくあしらったため、後に大洪水に遭うという天罰を受けたそうです。彼女に手を貸した親子だけが無事だったそうで…善行を積まなければ不幸になるという事でしょうか。結構シビアです。
そんなバーベー湖は、2011年にラムサール条約に認定され、翌年は国定記念物にも指定されました。国内の注目度も高まっており、湖を巡るクルーズツアーに参加する人も増えています。旅行者にとっては馴染みのないエリアですが、機会があれば立ち寄ってみてくださいね。
ベトナムのネクスト世界遺産⑧オケオ遺跡
引用：Vietnam National Administration of Tourism
ベトナム南部アンザン省トアイソン郡にある「オケオ遺跡（Các di tích văn hóa Óc Eo）」は、1～7世紀に栄えた扶南国の港町・オケオ（現メコンデルタ地帯）の古代遺跡です。1942年にフランスの考古学者が発見して以降、450ヘクタールの土地で彫像や陶磁器など様々な遺跡が出土し、当時存在した建築物の痕跡も見られたそうです。
その一部はベトナム歴史博物館に展示されており、ベトナムの国宝として認定されたものもあります。2012年には世界遺産登録に向けて申請も行われ、貴重な古代遺跡として高く評価されています。考古学マニアでない限り現地まで行く必要はないと思いますが、オケオ遺跡を見る機会がある方は、ぜひ細部まで観賞してみてください。
ベトナムのネクスト世界遺産⑨ドンヴァン高原
引用：Trang thông tin đối ngoại tỉnh Tuyên Quang
ベトナム最北端のハザン省にある「ドンヴァン高原（Cao nguyên đá Đồng Văn）」は、標高1,500メートル前後の山岳地帯となっています。岩石の起伏が激しいカルスト地形が特徴的で、その独特かつ美しい光景から別名「グレーヘヴン」と呼ばれています。
引用：ỦY BAN BIÊN GIỚI QUỐC GIA – BỘ NGOẠI GIAO
ここは少数民族が暮らす聖地でもあり、モン族・ザオ族・テイ族・ロロ族などの伝統的な暮らしを始め、石造りの建築物、刺繍が施された衣装、郷土料理など様々な文化を知る事ができます。2010年にはベトナム初のユネスコ世界ジオパークに認定され、観光客も増加しています。
ドンヴァン旧市街や市場、モン族王の邸宅など見所も多く、外国人観光客から見ても十分に楽しめる場所だと思います。アクセス方法や宿泊施設などをしっかりと調べた上で、ぜひ訪れてほしい名所です。
ベトナムのネクスト世界遺産⑩ヴィンモックトンネル
引用：Trung tâm xúc tiến Đầu tư, Thương mại và Du lịch tỉnh Quảng Trị
一見のどかな田舎町にも見えるベトナム北中部クアンチ省は、かつてベトナム戦争時に軍事境界線が引かれていた場所でもあります。北緯17度線上のベンハイ川付近にあったヴィンモック村では、住民たちが米軍の爆撃を避けるために巨大な地下道を掘りました。それが「ヴィンモックトンネル（Địa đạo Vịnh Mốc）」です。
引用：同上
地下23メートル、総距離にして2キロメートル以上の長い地下道には、600人もの人々が暮らしていたとされます。現地には不発弾を始めとする戦争資料が数多く展示されており、クアンチ省全体で見ると、430もの戦争遺跡が残っています。いかに激しい爆撃が行われたのかを知る貴重な場所として、当初は退役軍人がDMZ（非武装地帯）ツアーを実施していましたが、国の歴史的記念碑に認定された事もあり、今では多くの観光客が訪れるようになりました。
ヴィンモックトンネルを見学したい方は、中部フエ発のツアーを利用すると便利です。1日かけてDMZ関連の様々な場所を巡るので、戦史を学びたい方にオススメです。
まとめ
以上、ベトナムの世界遺産候補をご紹介しました。聞き慣れないスポットばかりだったと思いますが、日本人観光客も訪れた事がある場所なので、旅行慣れしている方やガイドを伴うツアーに参加すれば、誰でも見に行く事ができます。初めてのベトナム旅行であればやはり世界遺産をオススメしますが、2回目以降はぜひこれらの名所も訪ねてみてください。ベトナムの新しい一面に出会えるはずです。[jvs_footer]
