コーヒー豆の生産量は世界で第2位、輸出量は世界全体の20%を占めるのが、コーヒー大国ベトナムです。日本に入ってくるコーヒー豆もまた、ブラジルに次いでベトナム産が2番目に多い事をご存知でしょうか?
実は身近な存在であるベトナムコーヒーですが、その魅力は意外にも知られておらず、ベトナム旅行に来て初めて飲んだという人も少なくありません。
ベトナム現地では、フランス統治時代のカフェ文化が今もなお親しまれており、ヨーロッパ風のおしゃれな装飾のカフェや、路上にイスを並べて飲むローカルカフェなど、街中はコーヒーを飲むお店で溢れています。そこで飲んだコーヒーをお土産に持ち帰り、伝統的なスタイルを真似て自分で淹れてみたい…という方も多い筈です。
そこで今回は、ベトナムコーヒーの概要から美味しい淹れ方&飲み方、オススメのコーヒー土産まで、一挙にご紹介していきます。これからベトナム旅行に行かれる方や、ベトナムコーヒーを買って帰国した方は、ぜひご参考ください!
ベトナムコーヒーとは?
そもそも、ベトナムでのコーヒー栽培はどのようにして始まったのでしょうか。きっかけは17世紀頃まで遡り、ヨーロッパからの宣教師到来によって持ち込まれたと言われています。19世紀に入ると、フランスの占領下に置かれたことでコーヒー栽培が本格化し、とりわけ中部のランビエン高原で盛んに行われました。
品種はロブスタ(Robusta)種と呼ばれるコーヒー豆で、主要なアラビカ種に対して低高度かつ高温多湿な土地に対応し、病気にも強く育てやすいのが特徴です。現在、ベトナムで生産されるコーヒー豆の95%をロブスタ種が占め、ダクラク省・ラムドン省・ダクノン省が国内最大の生産地となっています。
ベトナムコーヒーってどんな味?
ロブスタ種のコーヒー豆を挽いて入れるベトナムコーヒーは、香ばしい香りと強烈な苦み、後味にしっかりと残る渋みが特徴です。但し、ロブスタ種本来の味は癖が強く飲みにくいため、深煎りして濃く抽出したコーヒーに、練乳をたっぷりと加えた甘いカフェオレにして飲むのが一般的です。
ベトナムにあるほぼ全てのカフェがこのカフェオレを提供しており、ホットは「カフェスア(Cà phê sữa)」、アイスは「カフェスアダー(Cà phê sữa đá)」と呼ばれています。一口飲めば強い苦みと濃厚な甘みが広がり、ベトナムの熱帯気候にも負けないパンチのある味わいに驚かされます。
それでは実際に、ベトナムコーヒーの飲み方をチェックしていきましょう。
インスタントベトナムコーヒーの淹れ方
手軽に本格的な味を楽しめるのが、インスタントのベトナムコーヒーです。中でも「G7」と呼ばれるチュングエン(TRUNG NGUYEN)社のコーヒーは、お土産に大人気。筆者はこちらのブラックタイプを好んで購入しています。
淹れ方は一般的なインスタントコーヒーと同じですが、コーヒー1袋に対しお湯60mlと非常に少ない量で作るのがポイントです。やや粉っぽいため、よくかき混ぜましょう。
G7のインスタントコーヒーは、伝統的なベトナムコーヒーよりもやや酸味のある味わいで、比較的飲みやすいのが特徴です。本来の味を楽しみたい方はブラックタイプを、甘口が好きな方は、同じG7シリーズにあるコーヒーと砂糖を併せた「2 in 1」や、コーヒー・砂糖・ミルクが一緒になった「3 in 1」タイプがオススメです。
フィルター式ベトナムコーヒーの淹れ方
次は、伝統的なベトナムコーヒーの淹れ方を紹介します。
<必要な道具・材料>
・ベトナム式コーヒーフィルター
・耐熱カップ
・ティースプーン
・ベトナムコーヒー(挽いたもの)…15g
・お湯…110cc
・コンデンスミルク(好みに応じて)…25g
※分量は目安です。
まずはコーヒーフィルターを分解します。ベトナムコーヒーを淹れるフィルターは、このようにアルミやステレンス製のものを指します。
①上蓋、②中蓋、③ドリッパー、④ソーサーの4つで1セットになっており、コーヒー1杯を淹れるのに全てのアイテムを使用します。
ドリッパーには写真とおり穴が空いており、ここからコーヒーが抽出される仕組みです。ペーパーフィルターで淹れるコーヒーとは、勝手が違うのが分かります。
準備が整ったら、ソーサーの上にドリッパーを置き、コーヒーの粉を約15g(ティースプーン3杯分ほど)入れて平らにならします。この時に粉が若干こぼれるので、ソーサーの上に溜まったら捨てましょう。
コーヒーの上に中蓋を乗せ、つまみの部分を上からギュっと押さえつけて固定します。この時、軽く乗せるとお湯を注いだ際に中蓋が浮いてしまい、コーヒー粉も浮いてきてしまいます。そうなると、ベトナムコーヒー独自の濃い味に抽出できません。必ず押さえつけるようにしましょう。
カップの上にソーサーを置いてセットします。甘いカフェスアにしたい方は、この時点で練乳約25gをカップに入れておきましょう。コーヒーと練乳が二層に分かれて、きれいな見た目に仕上がります。
お湯が沸いたら、中蓋の上からお湯を少量回しかけます。中蓋を覆うくらい入れて、豆をじっくり蒸らしていきます。注ぎ口の細いケトルを使うのが理想的ですが、無ければ何でも大丈夫です。
30秒ほど置いたら、もう一度中蓋の上から残りのお湯を注ぎます。薄めに淹れる場合はお湯の量を増やしますが、ドリッパーの7分目くらいに留めておきましょう。
最後に上蓋を被せて、コーヒーが抽出されるのを待ちましょう。
最初は何も起こりませんが、徐々にコーヒーが落ちてきます。5~10分ほどでドリップが完了しますので、のんびり待ちましょう。この待機時間にカフェで仲間たちと雑談するのが、ベトナムおじさん達の一番の楽しみなのだとか。
※しばらく経ってもコーヒーが抽出されない場合は、ソーサーの穴にコーヒー粉が詰まっている可能性があります。
全て抽出できたら、上蓋を外してひっくり返し、その上にドリッパーを置いて受け皿にします。
これで、伝統的なベトナムコーヒーの完成です!
※紙フィルターの代用について
ベトナムコーヒーを淹れる際に、専用のフィルターを使わなくても、紙フィルターで代用できるのでは?という意見を耳にします。確かにコーヒーを抽出する事はできますが、ベトナムコーヒー独自の焙煎した香りや濃厚な味が損なわれてしまいます。可能であれば、ぜひ専用フィルターを使用してください。
ベトナムコーヒーの飲み方
コーヒーを淹れたら、ベトナム式の美味しい飲み方を試してみましょう。
カフェデン(Cà phê đen)
上記のベーシックなブラックコーヒーです。深煎りしたロブスタ種の香りをしっかり感じられますが、非常に濃いので飲めない方はお湯で薄めてください。砂糖を溶かして氷を入れたアイスコーヒーにしても美味しいです。
カフェスア(Cà phê sữa)
引用:https://zingnews.vn/ca-phe-sua-da-sai-gon-duoc-bloomberg-ca-ngoi-post483440.html
こちらもベーシックなカフェラテです。予めカップに入れた練乳とコーヒーをよく混ぜて飲みます。練乳の甘みが加わる事で、コーヒーの苦みがより引き立ちますよ。氷を入れれば、まさしくベトナムの屋台で飲むカフェスアダー(カフェスダ)の味になります。
カフェスアチュア(Cà phê sữa chua)
引用:https://vinbarista.com/blog/cach-lam-sua-chua-ca-phe-vua-dep-da-lai-tinh-ca-ngu-thread969.html
個人的にイチオシの飲み方は、ヨーグルトとコーヒーを混ぜたカフェスアチュア。コーヒーのカップ1/3のヨーグルトと、1/4の練乳を入れてよく混ぜて、氷を入れたら上からコーヒーを注ぎます。甘酸っぱい中にコーヒーのコクが加わって、癖になる味わいですよ。
カフェコットドゥア(Cà phê cốt dừa)
ベトナムを訪れる旅行者に大人気のココナッツコーヒー。自宅で作るのは難しいため、ぜひ現地のカフェで試してみてください。ココナッツミルクで割った甘いカフェスダの上に、ココナッツミルク入りのフロートを乗せた一杯です。スプーン混ぜながらいただきます。
カフェチュン(Cà phê trứng)
引用:https://english.vietnamnet.vn/fms/travel/164995/egg-coffee—special-drink-in-hanoi.html
ハノイで生まれた不思議な飲み物、エッグコーヒーことカフェチュン。温かいコーヒーの上に、卵黄と練乳を泡立てた甘いクリームが乗っています。ティラミスやプリンのような味がするため、スイーツ感覚で飲めると評判です。
シントーボーカフェ(Sinh tố bơ cà phê)
引用:https://www.foody.vn/ho-chi-minh/saigonese-cafe-bo/thuc-don
アボカドとたっぷりの練乳、砂糖、氷をクラッシュして作ったアボカドスムージーに、ベトナムコーヒーを加えたアレンジドリンクです。ねっとり甘いアボカドに苦いコーヒーが合わさったその味は……ぜひ現地で試してみてください!
他にもまだまだたくさんの飲み方がありますが、まずはベーシックな練乳入りコーヒーから試してみましょう。かなり甘く感じるかもしれませんが、ベトナムのように蒸し暑い日に飲むと格別な美味しさです。普段アラビカ種を飲んでいる方は、ロブスタ種の新しい可能性を感じられる筈です。
お土産にぴったり!ベトナムコーヒーのおすすめブランド
ベトナム旅行に行く機会がある方は、今回ご紹介したインスタントコーヒーや、コーヒーを淹れる道具と粉を購入しましょう。通販で買うこともできますが、現地の10倍近く値上げされた商品も見かけますので、安く購入したい方や色々な種類から選びたい方は要チェックです。
G7
先述したTRUNG NGUYEN社のコーヒーシリーズです。小分けにされた袋入りのインスタントコーヒーは、ばら撒き土産にぴったり。市場では高値で売られていたり、本物と偽った類似品である事も少なくないため、よく確認してから購入してください。
<参考価格>
・ブラックタイプ:2g×15袋入り 21.900ドン(約110円)
・2 in 1タイプ:15g×15袋入り 47.100ドン(約236円)
・3 in 1タイプ:16g×18袋入り 47.900ドン(約240円)
※公式サイトを参照
キングコーヒー(King Coffee)
引用:https://www.tnicorporation.com/
TRUNG NGUYEN社の元副社長タオ氏が立ち上げたTNI Corporation社のコーヒー。お家騒動により分岐したブランドのため、G7の類似品かな?と思いきや、さっぱりめなG7に対し、濃いめのしっかりとした味を感じました。飲み比べが好きな方は、ぜひキングコーヒーをチョイスしてください。
カフェヴィエット(Cafe Việt)
日本でもお馴染み、ネスレのベトナム社が販売しているカフェヴィエットは、本格的な豆の味がするとローカルからも高評価。値段はやや高いですが、世界的なブランドとあって安定した美味しさです。日本で購入できる同社のコーヒーからは想像もつかない、強い苦みと香ばしい香りに驚くでしょう。
ビナカフェ(Vinacafé)
引用:https://www.vinacafebienhoa.com/
国営企業のビナカフェ・ビエンホア(Vinacafé Biên Hòa)が展開するビナカフェシリーズは、ちょっぴり懐かしいパッケージが特徴です。老舗のコーヒーブランドとあって、本格的なベトナムコーヒーの味を楽しめます。上記の人気ブランドとはまた少し違う味がするので、気になる方は試してみてください。
スターバックス
意外にもオススメなのが、スターバックスベトナム(Starbucks Vietnam)のコーヒーです。現地のスタバでは、ベトナム語のパッケージに入ったオリジナルコーヒーや、ベトナム・ホーチミン・ハノイのランドマークを描いた限定マグカップなどを販売しています。タンブラーもシーズン毎にデザインが変わって面白く、スタバマニアの方には喜ばれるお土産です。
お土産に喜ばれる!ベトナムコーヒーフィルター
コーヒー好きの方には、ベトナムコーヒーと共に専用フィルターをお土産にすると喜ばれます。フィルター自体はどこでも購入できますが、こだわる方には以下がオススメです。
ルナムのスタンダードボックスセット
高級カフェのルナム(Cà phê RuNam)が販売する、ベトナムコーヒーのギフトボックス。ロブスタ種・アラビカ種を絶妙な加減でブレンドしたコーヒーに、輝かしいゴールドのフィルターはブランドのロゴ入りとなっています。ギフトボックスの模様も可愛らしく、まさしく指名買いするに相応しい逸品です。価格は380.000ドン(約1,900円)です。
ハイランズコーヒーのブレンドコーヒー&銀フィルター
引用:https://www.highlandscoffee.com.vn/
人気No.1のカフェチェーン、ハイランズコーヒー(HIGHLANDS COFFEE)では、お店の味をお土産に持ち帰る事ができます。オリジナルブレンドのチュエントン(TRUYỀN THỐNG)は、ロブスタ種とアラビカ種を独自のレシピで混ぜ合わせたもの。フィルターはフィンイノックス(PHIN INOX)と呼ばれ、伝統的なステレンス製のタイプを用意しています。併せて買っても126.000ドン(約630円)と格安です。
フックロンの巾着&ポーチ入りギフトセット
地場の大手カフェチェーン、フックロン(PHUC LONG)はハス茶などのお茶類が有名ですが、個人的にはコーヒーのギフトセットが可愛くてオススメです。アオザイ女性のイラストが描かれた巾着や、ロゴ入りのミニバッグに入ったコーヒー&フィルターセットは、お土産にぴったり。空港の出国ロビーにある店舗でも購入できるため、買い忘れてしまった方はぜひお立ち寄りください。価格は1つ1,000円前後です。
一口にベトナムコーヒーと言っても、本当にたくさんのブランドからコーヒーや関連ツールが販売されています。中には伝統工芸のバッチャン焼きでできたフィルターもあり、コレクションとして置いておくのも良さそうです。ぜひこの機会に覚えておき、気になるものは現地で買い揃えましょう。
まとめ
以上、ベトナムコーヒーの飲み方やオススメのお土産、その他コーヒーに関する様々な情報をお伝えしました。元々はフランス統治時代に広まったものですが、今やベトナムを代表する文化として親しまれ、旅行者も手軽に楽しめるようになったベトナムコーヒー。
軒下に並べられた小さなイスに座って、ローカルの人々と伝統的なコーヒーを飲む時間は、日本ではできない貴重な文化体験だと思います。そして、帰国後もベトナムコーヒーを楽しむ事ができれば、懐かしい味と共に素晴らしい思い出が蘇ってくる事でしょう。
ベトナムの今と昔を繋ぐCà phêの魅力を、心行くまで体感してください!
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