ベトナムが誇る世界遺産「古都フエ」は、ベトナム最後の王朝であるグエン朝時代の都として栄えました。現在はトゥアティエン=フエ省に改められ、省都であるフエには王宮や寺院が数多く残っています。そして、王朝時代の味を受け継ぐ「フエ料理」もまた、ベトナムの貴重な文化遺産として知られています。近頃はホーチミンにもフエ料理店が増えており、誰もが本場の味を楽しめるようになりました。
そんな訳で今回は、リアルに週3でフエ料理を食べていた筆者が、「本当は教えたくない」ホーチミン1区のフエ料理レストランを紹介します。絶品のご当地グルメを堪能したら、皆さんもフエ料理の虜になってしまう事間違いなし。ぜひ本稿を参考にして、お気に入りのお店を見つけてくださいね。
ベトナム名物「フエ料理」とは
引用:フエ観光情報促進センター
ではまず簡単に概要をお伝えします。グエン朝時代に王宮で食されていた宮廷料理が庶民へと伝わり、独自の食文化を形成していったとされる「フエ料理」。フエ省観光局では、このフエ料理を3種類に分類しており、高級食材を使った豪華な「宮廷料理」、フエ独自の調理法で作られた「名物料理」、安くて美味しい「庶民の食べ物」として紹介しています。
ベトナムにあるフエ料理レストランは、基本的に名物料理と庶民の食べ物の2種類を提供しています。フエ料理=宮廷料理を食べると思われがちですが、現代に残っているのは大衆向けの料理である事を知っておきましょう。
代表的なフエ料理とその特徴
大衆向けのフエ料理には、米粉やタピオカ粉を使用したものが多くあります。蒸し餅「バインボッロック」「バインベオ」「バインザムイッ」、麺料理「ブンボーフエ」「バインカインクア」「ブンティットヌン」など。レモングラスが香るつくね「ネムルイ」、シジミごはん「コムヘン」も定番です。
フエ料理は味付けに香辛料を使い、一般的なベトナム料理よりもピリ辛く仕上げるのが特徴です。これは古代チャンパ王国の末裔である、チャム族の食文化を受け継いでいるためと言われています。さらに食べる時も、自分で辛味を加えて調味するのがフエ流です。
それでは実際に、フエ料理を提供しているレストランを見ていきましょう。
ホーチミン1区のフエ料理レストラン①ブンボーフエドンバー
「ブンボーフエドンバー」は、フエ名物であるブンボーフエの専門店です。オープンから20年、メニューは清くブンボーフエ1種類のみを提供し、その美味しさを追求してきました。2020年に移転してからは、雷魚入りカニうどん「バインカンカーロックチャークア」や、「バインナム」「バインイット」などのお餅料理全般も提供しています。
・ブンボーフエってどんな料理?
引用:同上
牛ダシをベースにしたスープに、ブンという米粉麺を合わせ、肉類や野菜を入れた牛肉麺の事を「ブンボーフエ」と言います。スープはレモングラスの香りやサテの辛味が効いており、さらにお好みでライムの絞り汁や唐辛子を加えて食べるのが一般的です。フォーなどの定番麺料理よりもパンチのある味が特徴です。
・人気の秘密はココにあり!
引用:同上
ブンボーフエドンバーのブンボーフエは、スライス牛肉やカニ団子、蒸しソーセージ、野菜などの具材がたっぷり。カニ団子はお店仕込みのオリジナルです。これらが塩気の強い濃厚なスープとよく絡み、最後の一口まで美味しくいただけます。予算は70.000ドン(約350円)と相場より高いですが、初めてブンボーフエを食べる方はぜひお試しを!
ホーチミン1区のフエ料理レストラン②ベップフエ
「ベップフエ」は、フエ料理などを提供するおしゃれなカフェレストラン。こぢんまりとしたアットホームな雰囲気の店内で、ホスピタリティ抜群の店員さんが迎えてくれます。メニューはしじみご飯「コムヘン」やしじみ麺「ブンヘン」、魚の発酵ダレ和え麺「ブンマムネム」などの一品料理から、野菜たっぷりのランチプレートまでバリエーション豊か。
・コムヘンってどんな料理?
引用:同上
ご飯の上にたっぷりの味付けシジミ、香草などの野菜、ピーナッツ、豚皮チップスが乗ったフエの朝ごはん。全体をよ~く混ぜたら、そのままかき込んで食べても良し、別添えのしじみスープをかけて、お茶漬け風にして食べても良し!一皿で二度美味しい料理です。フエ現地では、ヘン島(日本語でしじみ島)で食べるコムヘンが絶品だと言われています。
・人気の秘密はココにあり!
引用:同上
ベップフエでは、フエの家庭料理をおしゃれにアレンジしたスタイルが女性客から大人気。日本人在住者の間では、ホイアン名物のベトナム風伊勢うどん「カオラウ」が食べられる事でも話題です。予算は100.000ドン(約500円)、観光スポットのタンディン市場やピンクの教会から徒歩5分という好立地なのも嬉しいところ。ぜひお立ち寄りください。
ホーチミン1区のフエ料理レストラン③ナムザオ
引用:Foody
ベンタイン市場から向かいの路地裏にある「ナムザオ」は、エキゾチックな雰囲気が漂うフエ料理レストラン。ガイドブックにも掲載されている有名店で、フエの名物料理がお手頃価格で食べられます。ここで見逃せないのは、フエの定番料理である小さな蒸し餅「バインべオ」。訪れる観光客は、ほぼ全員がオーダーしている人気ぶりです。
・バインべオってどんな料理?
米粉を蒸して作る一口サイズの餅料理。上に干しエビやカリカリに上げた豚皮などを乗せ、ベトナム風チリソースのヌクチャムをかけていただきます。餅にスプーンで十字の切り込みを入れるのが、上手に食べるポイントなのだとか。一度の注文で10個ほど出てくるので、量が多そうに見えますが、1~2人で注文してもぺろりと食べられます。
・人気の秘密はココにあり!
ナムザオの魅力は、何といってもアクセスの良さ。ベンタイン市場から徒歩1分という好立地で価格も安く、2品食べてビールを飲んでも100.000ドン(約500円)弱に収まります。ベーシックなフエ料理を色々試してみたい方は、まずナムザオに行ってみる事をオススメします。なお、ピーク時間は混雑しているので、空いている時間を狙ってくださいね。
ホーチミン1区のフエ料理レストラン④ザ・フエハウス
引用:@thehuehouse
「ザ・フエハウス」は、高層ビルの最上階にあるルーフトップレストランです。(正確にはホーチミン3区にありますが、場所的にはほぼ1区なので紹介します。)フエの伝統スタイルを意識したムード満点の店内で、ビールを飲みながらゆったりとディナーを楽しめます。フエ料理をおつまみにするなら、エビ入り蒸し餅「バインボッロック」がオススメです。
・バインボッロックってどんな料理?
引用:同上
甘辛く味付けしたエビをタピオカ粉の生地で包み、さらにバナナの葉で包んで蒸した、フエの伝統料理です。半透明に透けた生地が美しく、ヌクマムにつけて食べてみると、もちもちプルプルの食感がやみつきになる美味しさです。元々はフエの宮廷料理でしたが、今ではおやつとして気軽に食べられています。
・人気の秘密はココにあり!
引用:同上
ザ・フエハウスは、宮廷料理を思わせる美しい盛り付けに、シックでおしゃれなインテリア、そして屋上からはホーチミンの夜景が見える事もあり、大人の旅行者に支持されています。予算も300.000ドン(約1,500円)あれば十分なので、リーズナブルに楽しめるのも嬉しいポイント。フエ料理以外のメニューも豊富です。
ホーチミン1区のフエ料理レストラン⑤ホンハン
引用:Foody
ほぼ年中無休で朝6時~23時まで営業している「ホンハン」は、いつでも気軽にフエ料理が食べられるローカル食堂です。北部名物の蒸し春巻き「バインクオン」が有名な人気店ですが、フエ料理も充実しています。特に、色々な餅料理を乗せた「バインフエタップカム」や、豚肉入りサラダ麺「ブンティットヌン」がオススメです。
・ブンティットヌンってどんな料理?
素麺のような細い米粉麺に、焼き豚やたっぷりの生野菜、ナッツなどを乗せた汁なし麺。ヌクマム入りのチリソースをかけて、しっかりと混ぜてからいただきます。本場フエでは濃厚なピーナッツソースを使用しますが、都市部ではさっぱりとした味付けが人気です。ホンハンのブンティットヌンは、具材に揚げ春巻きが入っていてボリューム満点。
・人気の秘密はココにあり!
引用:Foody
ホンハンはいつもローカル客で賑わっており、GrabFoodの配達業者もひっきりなしに訪れます。メニューが豊富でどれも美味しく、価格も安く、回転率が早く、朝から晩まで開いているからでしょうか。ひとまず行けば色々食べられると思いますので、ぜひ一度立ち寄ってみてください。予算は1人60.000ドン(約300円)程度です。
料理だけじゃない!フエのおやつ・お茶・フルーツ
フエの伝統料理もさる事ながら、フエならではの「おやつ」も見逃せません。ホーチミンではなかなか出会えない物もありますが、見かけたらぜひ試してほしい名物を紹介します。
・チェーボッロッヘオクアイ
ベトナムの定番スイーツ「チェー」が元になっているフエのおやつです。本来は甘く煮た豆や白玉団子に、シロップをかけて食べるあんみつのような物。それがフエではなんと…豚肉をタピオカ粉で包んだ肉団子に、甘いシロップをかけて食べるのです。衝撃的な組み合わせですが、甘じょっぱくて意外にも美味しいです。
・チェーケーフエ
引用:Môi trường và Đô thị Việt Nam điện tử
同じくチェーの一種で、フエ独自のデザートとして知られている粟ぜんざい。粟を炊いて砂糖で調味しており、鮮やかな黄色の見た目に、粒々とした不思議な食感が特徴的です。これにゴマ入りライスペーパーを浸していただきます。フエでは端午節に食べるという話もあり、運が良ければ出会えるかもしれません。
・メースン
フエ土産の王道「メースン」は、ピーナッツを練り込んだお餅に、たっぷりの白ゴマをまぶしたお菓子。皇帝も好んで食べていたそうで、今ではベトナム中の人々がフエ名物としてお土産に購入します。ごまの香ばしい香りともちもちの食感は、日本人好みの味でとっても美味しいので、ばら撒き土産としてもオススメです。
・バインコアイ
引用:Zing news
ベトナム版お好み焼きと呼ばれるバインセオのフエバージョン「バインコアイ」。バインセオよりも一回り小さく、揚げ焼きした厚めの生地はサクサクとした食感で、中には具材がたっぷり入っています。これを野菜で包み、ピーナッツソースをかけていただきます。食べごたえ抜群で、ビールのお供にもぴったりです!
・宮廷茶
かつて王宮でも飲まれていたとされるハーブティーです。蓮の花や菊の花、竜眼、甘草、アーティーチョークなどの数十種類が配合されたお茶で、薬膳効果があると言われています。古式スタイルのカフェなどでお試しできますよ
(詳しくはこちら)。
・タインチャ
フエのトゥイビュー村で採れる、グレープフルーツのような果物。筆者も食べた事はありませんが、甘くて美味しいのだそう。サイズも結構大きくて、手のひらからはみ出るくらいあります。
まとめ
以上、本当は教えたくないフエ料理レストラン5選に加えて、現地ならではのおやつ等も紹介しました。日本人好みの味つけで、比較的食べやすいとされるベトナム料理ですが、その中でもフエ料理は特に好ましい味だと思います。もちもちプルプルとした食感も馴染みやすく、一品ごとの量も少ないので色々な料理を楽しめますよ。
皆さんもベトナムに来たら、ぜひ本場のフエ料理を味わってみてください。きっと現地に行ってみたくなるはずです![jvs_footer]