カンボジアの遺跡といえばアンコールワットが特に有名ですが、もちろん、アンコールワットだけが名所ではありません。
今回紹介させていただくのはサンボー・プレイ・クックという遺跡で、こちらはアンコールワットよりも古い時代に建てられました。アンコールワットが12世紀に建てられたものですが、こちらのサンボー・プレイクックは7世紀の時代に建てられたとされており、アンコールワットよりも500年も前の時代にはすでに存在していました。
しかしながら、アンコールワットよりはるかに古い歴史を持つのにもかかわらず、2017年になるまで世界遺産に登録されなかったということもあり、まだまだ謎が多い遺跡です。
今回はそんな謎多き遺跡、サンボ―・プレイ・クックについてご紹介します。
サンボー・プレイ・クックを建造した古代国家真臘(しんろう)
一世紀頃から七世紀頃まで現在のカンボジアの南部には扶南(ふなん)という国が存在しました。
扶南の属民であったクメール人は、メコン川に到達し、そこで扶南から最初の独立国家である真臘(しんろう)を興しました。建国された当初は真臘は扶南の従属国でありましたが、一世紀足らずのうちに扶南を占領し、滅亡にまで追いやりました。また、元々はインド文化の強い扶南の従属国であった真臘に仏教が伝わり、これがカンボジアの文化に多大な影響を与えることとなります。
そして、扶南を滅ぼした当時の真臘の王であるイシャ―ナヴァルマン一世は扶南を滅ぼした後、真臘の首都イシャナプラを建造し、寺院群であるサンボー・プレイ・クックを建立しました。
サンボー・プレイ・クックの魅力
①大樹が絡んだ遺跡
アンコール遺跡群の一つであるタプロム遺跡はガジュマルの大樹が絡まっている状態で有名ですが、こちらのサンボー・プレイ・クックでもその様子をいくつか見受けられます。
大樹が遺跡に絡んだことで遺跡に神秘的な雰囲気を醸すタプロム遺跡は12世紀ごろに建立されたわけですが、サンボー・プレイ・クック遺跡は7世紀ごろに建てられました。
サンボー・プレイ・クックのほうが古い時代に建てられた遺跡ではありますが、2017年に世界文化遺産に登録されたということもあって、今まで余り知られていなかっただけでタプロム遺跡以上に神秘的な遺跡だと世界から評価されるのかもしれません。
②レンガで出来た八角堂
サンボー・プレイ・クック内部にはレンガ造りの寺院がいくつかありますが、特にサンボー・プレイ・クック南部にある八角形の寺院が目立ちます。仏教で八という数字には意味があるのは、仏様がなくなった後その遺骨は八つに分けられ別々にその遺骨は祀られたということに由来しています。そのため、八角形の寺院を八角堂と呼び、供養や鎮魂のための寺院となっています。
真臘はインド文化の強い扶南を滅亡させたため、扶南を経由したインドの文化に強く影響された仏教も真臘に伝わりました。なので、この仏教とつながりの深い八角堂が真臘にあるのは自然なことで、真臘の文化にアンコール遺跡群を建築したクメール王国も影響を受けた可能性もあります。
その一方、アンコール遺跡群は石で出来ていますが、サンボー・プレイ・クックの遺跡はレンガで出来ていることから、同じカンボジアの国家でも、真臘の建築様式とアンコール遺跡群を建築したクメール王朝の建築様式は異なっていることが伺えます。
サンボー・プレイ・クックに行きたいのなら、コンポントムを拠点に!
サンボー・プレイ・クックを訪れてみたいのなら、プノンペンとシェムリアップの間に位置するコンポントムから出発するのがオススメです。コンポントムまでシェムリアップから三時間ほどかかり、終点がコンポントムのバスが無いのでシェムリアップからプノンペンに行くバスに乗って途中でコンポントムで降りるのが一般的な訪れ方となっています。
コンポントムは真臘が扶南を滅ぼした後、イシャーナヴァルマン一世が首都イシャーナプラを置いた土地で、遺跡などを展示する博物館がありますので、遺跡を実際に訪れる前にこの博物館に訪れてサンボー・プレイ・クックの知識を深めてみてはいかがでしょう?
また、現地の美味しい料理を提供してくれるレストランなどもあり、トゥクトゥク(三輪タクシー)に乗れば一時間ほどでサンボー・プレイ・クックにたどり着くことが出来るというまさにうってつけの土地です。
最後に、サンボー・プレイ・クックはまだまだ整備がなされておらず、観光客だけでサンボー・プレイ・クックを訪れるのは危険です。なので、コンポントムで案内を現地の人間に依頼してから訪れたほうが安全です。
まとめ
アンコールワットよりはるか古代に建築されたこのサンボー・プレイ・クックは、世界遺産に登録されてからまだ日が浅く、まだまだ研究の余地が有ります。当然、真臘がどんな国であったのかは依然謎のままになっていることのほうが多いです。
ですが、研究が進めばこの遺跡及び謎多きクメール人の実態にさらに迫ることが出来るはずです。
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